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「おめぇこの後どうする気だ」



手持ち無沙汰になった手でそれなりに乾いた髪をサラリと撫でて聞いた。


シン、とするその場で

そいつの俺より少し早い呼吸の音がよく聞こえる。



「・・・雪が止んだら出てくかなぁ」


「その後だよ。出てったあと」


「・・・さぁ?」



またそれだ。


雪なんて明日になれば止むかもしれない。

予報ではその予定だ。


いたら死んじまうような場所から逃げ出して

死のうとして、助けてやった俺の傍から離れたらこいつは確実に死ぬ。


そんな確信が何故かあった。


まさか帰りたくない場所に帰るわけもないだろうし。

行くあてもなくさまよっていれば、死にたくなくても死んじまう。



「・・・はぁ。おめぇほんとに、どっから来たんだよ」


「わかんないの。

無我夢中で逃げたから。場所なんて知らない」


「なんで逃げた?」


「・・・お巡りさん私ちょっと眠くなっちゃった」


「取り調べ中だ」


「お巡りさんが髪触るからだよ。

髪触られたら眠くなっちゃうの」



少し寝かせて欲しいと頼みながら既に横になるそれは

ちっこい背中をまた俺に向けて丸まる。


普段からそんな寝方をしているのか。

それとも、そんな格好でないと寝れない場所で寝ているのか。


虐待か、DVか。

そういうものから逃げてきたんだろうことは容易に想像できた。


だが逃げてきたくせに肝心なことは何も言わねぇ。

警察に頼れば解決できる内容かもしれねぇってのに。


ただこういう類のものは精神的な問題も関わってくるわけで

俺が聞きすぎることが正しい行動になる訳でもない。


既にスピスピと鼻息を立てて寝ているそれを、俺はもう一度ため息をついて抱き上げた。


やはり軽すぎるそいつが湯冷めしてしまわないように

できるだけ露出した肌を温めるように触れる。



「あれ、土方さん、お持ち帰りですかィ?」


「寝ちまったんだよ。どうしようもねぇから部屋で寝かせる。近藤さんは?」


「様子を見てみよう、だそうで」


「・・・そうか」



能天気にも寝ているこいつが何を抱え

何から逃げているのか、警察としてでは無い、ただの感情でそれを知りたくなっている気持ちに気付かないふりをして


ゆっくりと、自室へ向かった。






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あい(プロフ) - はるさん» コメントありがとうございます、また返信遅れて申し訳ありません。ずっとスランプ状態で更新しておりませんが、必ずきちんと更新させて頂きたいと思っておりますので、もし待っていただけるのなら今後ともよろしくお願いします! (2022年5月7日 23時) (レス) id: ac72e0904e (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - あいさん!あいさんの作品いつも楽しみに読ませていただいています!真選組の女とこの作品はもう更新予定ありませんでしょうか?よかったら教えて欲しいです!!いつも楽しみにしています!! (2022年4月8日 23時) (レス) id: 7cd419164a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あい | 作成日時:2021年10月19日 21時

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