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「もうやだ・・・もっと早く、もっと早く会いたかった。
どうしてっ・・・」
そこまで言って、そいつは黙った。
どうしてもっと早く来てくれなかったのか、きっと、そう言いたかったんだと思う。
けれどその言葉は、もうどうしようも無いことで
俺もいつまでも悔やんでいる事だから、そいつは先を続けなかった。
好きだと、伝えたかった。
伝えられたら、どんなに楽か。
知ってくれたら、どれだけ嬉しいか。
あわよくば、同じ気持ちなら。
そんなふうに思っちまう俺の中の青年的な心と
じゃあ同じ気持ちだったところで、伝えたところで
俺が最後までこいつを幸せに出来るか?という理性的な心。
できねぇさ。
人を斬ったこの手で、いつ死ぬかわからねぇこの体で
誰かを一生大切にすることなんざ、出来るわけねぇだろ。
泣き止んだそいつを自分から離して
そいつの腫れた目を見て笑ってやった。
「そろそろ仕事だ。ファッションショーは夜な」
そう言って、着替えて、そいつの見送りの元部屋を出た時
扉の前に紙が置いてあることに気づく。
しゃがんで拾いあげれば
もう何度か見た、死んだやつの眠る住所。
総悟か、と半ば呆れて天を仰ぐと
俺の上にAの顔があった。
「何かあったの?」
「なんもねぇよ」
「その紙は?」
「捨てとけ」
「いいの?大事な紙じゃないの?」
「んなもんもうとっくに記憶の中に入ってんだよ」
「・・・いらないってこと?」
そいつの言葉におう、と答え、俺は部屋を後にした。
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あい(プロフ) - はるさん» コメントありがとうございます、また返信遅れて申し訳ありません。ずっとスランプ状態で更新しておりませんが、必ずきちんと更新させて頂きたいと思っておりますので、もし待っていただけるのなら今後ともよろしくお願いします! (2022年5月7日 23時) (レス) id: ac72e0904e (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - あいさん!あいさんの作品いつも楽しみに読ませていただいています!真選組の女とこの作品はもう更新予定ありませんでしょうか?よかったら教えて欲しいです!!いつも楽しみにしています!! (2022年4月8日 23時) (レス) id: 7cd419164a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あい | 作成日時:2021年10月19日 21時