10.ラーメン ページ10
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あめあめフレフレ、口ずさむ程度の音程が雨の音と共に銀時の耳に残る。
隣で呑気に歌うAも、もう見慣れたものだ。
普段なら公共の場で歌うんじゃありませんと多少咎めたかもしれないが
江戸の歌舞伎町と言っても雨に降られてしまえば外に出る人も減る。
周りに人という人はおらず
その心地よい音程に銀時は身を任せてみた。
既に足元はびちゃびちゃ。
銀時のブーツの中すら濡れているのだからAの下駄なんかはもうグダグダだろう。
おんぶでもした方が良かったか、
Aのびちゃびちゃの足と雷にびくつく肩を見て少し後悔する。
そんなこと気にもとめず銀時の袖を小さく掴んで歩くA。
「あー、ラーメンの匂いするー」
「あぁ?おめぇもう食えねぇだろ」
「うんもう食べらんない!」
ケタケタと笑って答えるAに銀時は少し呆れた顔をする。
これに毎日付き合っている桂も、
毎日振り回されていた昔の自分たちもすごいと心の底から思った。
もちろん大切な妹的な存在で
嫌いだったりという感情はないがこの突拍子のない会話や突然の発言にはよく振り回されたものだと昔を思い出す。
「・・・あれ?小太郎の声がした」
「は?」
匂いの通り、すぐ近くにあったラーメン屋の前をとおりすぎた時
Aの耳は桂の声を捉えた。
銀時は考え事をしていたせいか何も聞こえなかったが
Aが桂の居場所を間違えたことは今までない。
五感全てが桂に敏感なのである。
「ラーメン屋さんから・・・」
「今日は集会なんだろ」
聞き間違いじゃねぇの、と簡単に口にはできなかったが
もし本当にここにいるのならAの興味を他に移さねぇと、と銀時は密かに焦っていた。
顔には出さないが、心の乱れは相当。
集会だと言ってAを置いて晩飯にラーメンを食っていたとなれば
間違いなくAは怒るし、喧嘩だ喧嘩。
喧嘩が始まってしまう。
昔から、2人の喧嘩に振り回されていたことまで思い出し銀時は焦っていた。
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RIO - 続きが読みたいです!!! (2022年3月14日 2時) (レス) @page21 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あい | 作成日時:2021年9月1日 0時