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9.好き ページ9






着きましたぜぃ、沖田さんのその言葉に、簾をあけられることを察した。


少し姿勢を伸ばして、お淑やかな私を見せようと焦る。


土方十四郎さんが好き、それは随分前から知っていた。

でも、まとわりつく、この家という鎖。


あの人を好きという気持ちを表すには、それがどうにも邪魔で

どかせなくて、きっと、向き合えない私の気持ちのひとつ。



「開けますよ」



そう言って見える土方十四郎さんの顔。


いつもの、怖い顔。

ふふ、何も怒ってないのに、そんなに皺を寄せて。


また、自分から笑いがこぼれる。


偽りじゃない笑いが出ないように。

どれだけ面白くて笑っても、お淑やかに、優しく。


どうぞ、と、降りる場所を開けてくれる。

手を取ってくれる訳では無いらしい。

おこがましいか。

女性への耐性がない訳では無いだろうけど、きっと私にそこでする価値はない。



「ありがとうございます」



仕草が、綺麗に見えますように。


でも、分かってる。

この人が好きなのは、綺麗な人でもお淑やかな人でもきっとない。

だれだってそうよね。


自分の前で、偽りの姿でいる人を誰が好きになるんだろう。


いやいや、好きになられてはいけないんだ。

期待したら、止められなくなるでしょう?


その場からそっと降りる。



「・・・あれ」



ぐらりと体が傾く。


立ちくらみ、というより、急に立ったから足がもたついた。



「お・・・い・・・、」



土方十四郎さんの驚いた顔。


こんなはずじゃなかったのに、と恥ずかしい。

何より、土方十四郎さんが咄嗟に支えてくれたのが恥ずかしい。


すっぽりと私の体を抱きしめて支えてくれた。


一瞬の出来事すぎて、びっくりした・・・。



「・・・ごめんなさい。・・・は、恥ずかしいです」


「危ねぇだろ・・・。大丈夫ですか?」



こくりと頷いて、温もりが離れてくのを感じる。

少し、名残惜しい。


顔が赤くなりそうで、なってそうで、そっと顔を逸らした。






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作者名:あい | 作成日時:2021年1月19日 22時

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