ー独占欲 ページ41
・
お散歩に行ってきます。
そう書いた紙を机の上に置いて、久しぶりに外に出た。
土方さんとは外に出られないから。
ただでさえ真選組副長。
弱みを握られるわけにもいかない。
そこら辺は私もよく理解しているから
わがままも言うつもりは無い。
だから、今現在こうして1人、少し暑い日差しの下で日傘を指して歩く。
「銀ちゃん銀ちゃん、見てアレ、夜兎かなぁ?」
「あぁ?最強の戦闘民族がそんなあちこちにいてたまるかってんだ」
聞いたことのある声に無意識にそっちを向いた。
あ、そよ姫様の所にいた・・・
「あれぇー!Aアル!久しぶりネー!」
名前を覚えていてくれたようで
赤いチャイナ服を着た神楽ちゃんは駆け足で私の元に来る。
さすが美人は日焼け対策も完璧アルな!と目を輝かせる。
私はそんな可愛い神楽ちゃんにニコリと笑って見せて
銀髪の銀さんにぺこりと会釈。
少し存在感の薄かったメガネくんもとい志村さんにも会釈をした。
「・・・お前、随分イメチェンしやがったな」
「一般の人から見たら、まだ長い方ですけどね」
「そっちの方がよっぽどいいんじゃねぇの」
どこまで事情を知っているのか知らないけれど
なんだか意味深な言い方に、結構知っているのかな、と考える。
「可愛いアル!トシは一緒じゃないアルか?」
トシ、神楽ちゃんの口から聞いた言葉に少し反応してしまった。
この子は何も考えずに言っているんだろうあだ名。
私は、いつまで土方さんなんだろう。
「彼とは散歩できないの。
多分今はどこかでなにか仕事をしてるわ」
「つれないアルな」
「ま、立派におまわりさんしてるってことだな」
「と言っても、江戸はなんだかんだ物騒ですからね。
美人さんが1人で歩くなんて危険ですよ」
「まだお昼だから大丈夫ですよ。
でも、そろそろ帰ろうかな」
送ってくぞ?と言われて、
申し訳ないから大丈夫だと断ろうとした。
でも、私が声を発する前に、土方さんの声が聞こえた。
「その心配はいらねぇよ」
「うわ、なんてタイミングで来てんだよ嫉妬深っ!」
「っるせぇな、人前で堂々と人の女ナンパしてんじゃねぇよ」
「違うの、送ってくれようとしただけ」
少し必死な土方さんにクスリと笑ってしまった。
けれど、そんなことはわかっていたようで
それでも男に送って貰うんじゃねぇよ、と半ば強制的に手を引かれた。
この人は案外、独占欲が強い。
・
227人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あい | 作成日時:2021年1月19日 22時