33.惚れた女 ページ34
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どんな状況だ、と聞くまでもなかった。
直ぐに味方の元にいったはいいものの
大将以外は倒れていて、それに刀を向けながらこっちを向いた総悟がいた。
「惚れた女に手出した男やるのはやっぱ土方さんでさァ」
「バカにしてんのか」
「まさか」
そう言って一歩引いた総悟を抜き
今にも走り去りそうな男を峰打ちした。
苦しそうに倒れた男を見て
本当は今にも殺したい衝動を止めた。
近かった。
あいつは何も考えていなそうだったけど
どうにも距離が近かったと思う。
何より、あいつを運ぶ時━━━━━運んだかどうかは定かじゃないが。
こいつでも、誰でも、あいつに触れたかと思うと嫌気がさす。
幸い、怪我はどこにもなさそうだった。
だが、俺がきちんとあいつに惚れたのはさっきが初めてだ。
1度手を掴んだ記憶はあるものの、
惚れたという感情を持って触れたのは初めてだ。
その俺より前に誰かが触れていたかと思うと
はぁ、心の底からどす黒い感情が湧き出てくる。
「お嬢さんは?」
「大人しくパトカーにいる」
「これからどうするんですかィ」
「さぁな、それはあいつに任せる」
「・・・まさかあの屋敷に戻りたいってかもしれねぇとか思ってんですかィ?」
「可能性はあるだろ。何年も暮らしてきたんだから」
1番隊に指示を出し終えた総悟との会話。
俺の返事に、総悟は呆れたように肩を竦め、
まるで分かってねぇや、と一言。
「あぁ?」
口悪くそう聞き返すも、総悟はそそくさとその場を離れていた。
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作者名:あい | 作成日時:2021年1月19日 22時