33.安心 ページ33
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｢最初、さん付けだったのに
急に呼び捨てになったの、嬉しかったんですよ｣
｢･･･何回だって呼んでやる｣
｢･･･あなたと初めて会ったのは
この間の、護衛の時じゃないんですよ｣
パトカーに向かっている途中
急に力が抜けたかカクン、と崩れ落ちそうになったA。
そのまま姫抱きをしてパトカーに乗せる。
｢何の話だ｣
｢･･･1度、迷子になった女の子を救いませんでした？
あなたが、まだ、髪が長かった頃｣
｢･･･まさか、あん時の｣
それは確かに、身に覚えがある内容だった。
まだ江戸に出てきてすぐのときだ。
やっと自分たちの居場所ができた頃、見回り中。
汗だくになって長い髪を靡かせて
高そうな着物を引きずって切羽詰まって走る少女。
あの時も、小さい女の子だと思ったけど
そうか、あの時から幼かったのかと納得した。
走りさろうとしたその子を捕まえて
事情を聞くと、家出だと言うから、そのまま屯所に連れていった。
たしかに、言われてみれば迎えに来たその子の親の雰囲気と
こいつの親の雰囲気は似ている気がした。
｢･･･とりあえず、行く｣
Aをパトカーに乗せ、色々と聞きたいことはあるが
仕事をするため敵の陣地へと足を運んだ。
Aは、ニコリと笑った。
気をつけて、や、死なないで、そんな言葉もなく
柔らかく笑った。
それがどこか余計に安心した。
負ける気なんてないが、ただ、心から柔らかく笑ってくれる。
その行為が、どこか心を軽くしてくれた気がした。
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作者名：あい | 作成日時：2021年1月19日 22時
