31.癖 ページ32
・土方十四郎・
私は今神を殺しましたよ?そう言って微笑む女。
私の方が罪重いや、と笑う。
ここまで来たら、後戻り出来ねぇ。
1度認めれば、もう元には戻れねぇ。
でも、俺の罪を聞いた後に
自分の方が罪が重い、そう言ってくれたことにどこか安心した。
俺なんかにゃもったいない女だ。
金持ちのいい男と結婚して、子供を産んで
笑いながら家族を作れたかもしれねぇのに。
でもきっと、お前ならこう言う。
そこに、愛はないと。
そして、俺はこう思う。
その笑いは、いつものお前のあの笑い方だと。
こいつは元々、当たり前は通用しない。
それならば、そばに置くのもアリかもしれねぇ。
苦しい思いして幸せに生きれねぇなら
俺が、十分とは行かなくても、幸せにしてやる。
「捕まってろよ」
「私が離れても、話してくれなさそうですね」
Aを抱き上げて
指示を出しながら敵を倒す。
「土方さん、ここは俺たちに任せて
お嬢さんパトカーに乗せてきてくだせェ」
変なことすんなよクソ方、それだけ言い残して走り去る総悟。
突っ込みたいところは多いけれど
それより先に、この場所からこいつを連れ出したかったか。
一緒にその場を離れ、パトカーに向かう。
「・・・でも、好きな人がいるんでしょう?」
寂しげな表情、
揺れる瞳、なんとも言えない声音。
心配そうにするその仕草すら愛おしくて
俺はとっくに末期だったと知る。
向き合ったら、離れらんねぇな。
「好きだったやつだ。もうこの世にはいねぇよ」
「・・・空に行ってまで貴方に愛されるなんて
よっぽど素敵な人だったのね」
「・・・今は、お前だよ」
悲しげな微笑みは驚きの表情に。
驚きの表情は、見たことないくらい、綺麗な微笑みに。
あぁ、こいつぁ、癖になっちまう。
・
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作者名:あい | 作成日時:2021年1月19日 22時