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29.人攫い ページ30

・A・




「笑ってんじゃねぇよ」


「癖なんです」



ここはどこだろう。

山崎さんが、必ず助け出すと言っていたけど

来れるのかな・・・。


土方さん、私の事、見てくれなかったし。



「おい」


「はい」


「お前の髪は、いくらになる」


「・・・髪だけじゃなくて、私ごと売った方がお金になりますよ。

それか、身代金とかですかね?・・・払うかな」


「・・・お前、なんでそんな呑気なんだ」



私を連れ去った人たちの中で一番偉いんだう人。


呑気と言われても。



「・・・死んでみてもいいかも、って思ってるんです。

だから、いっそのこと、殺して欲しいんです」



でもそしたら、お金になりませんね、と笑う。


好いた人にこっぴどく振られ

両親には捨てられているようなもの。


お飾りで笑っているだけのお人形。


これからもそうやって生きていくのか。

それならいっそ



「死んでしまった方が、楽なんです」



そう、そんな人生だ。


どれだけ頑張ったって、そんなもん。



「死なれちゃ困るな」



・・・声が違う。


俯いた私に対して発された声は、土方さんに似てる。



「・・・早かったな。

こいつぁ人質だ。殺されたくなかったら動くな」



暗い場所だったのに

真選組のおかげで光が刺した。


首元に付いているナイフ。


今倒れたら、死ねるかな。



「いいですよ。動いて。ぱっぱと取り締まっちゃってください」


「なっ・・・」


「人攫いさん、私はお金になりません。

利用価値もありません。失恋したばっかりです。


今ここで、偶然殺された方が、楽なんです」



私の発言に、遂に人攫いは怯えた。




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作者名:あい | 作成日時:2021年1月19日 22時

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