23.好きです ページ24
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「俺ァこっちで寝る。
襖は閉めるから、安心して寝ろ」
元々俺の布団を敷いていた場所にAの布団を敷き
暫くはそっちを使ってもらう。
特に何か見られてはいけねぇもんも
必要なもんもねぇような部屋だ。
一室使えなくても差し支えない。
「・・・土方さんの香り」
ポソリ、確かにそう聞こえた。
煙草が口から落ちそうになるのを何とか止める。
チラリと横目にAを見ればハッと口を手で抑えてるところだった。
「・・・聞こえました?」
「・・・いや、なんも聞こえてねぇよ」
「嘘!聞こえてたでしょう!」
恥ずかしい、と両手で頬を包むA。
ちっせぇ手だ。
片手で包めるくらいに。
「み、見ないでください!」
ひゃーっと顔を仰ぐその姿に、いつの間にかフッと笑っちまってたんだ。
真っ赤じゃねぇか、俺のその言葉に
さらにまた顔を赤らめるそいつは、いつもの綺麗とは違う。
可愛らしく見えた。
「・・・土方さん、好きです」
今度こそ、煙草が口から離れた。
畳に落ちたのを、何とか拾って
灰皿に戻してそこを掃く。
「バカ言ってんじゃねぇ」
「・・・はは、ですよね。でも、ほんとですよ」
顔を見れなかった。
どうも、こいつの傷付いた顔を見たくねぇ。
声が震えてて、どこか後悔してるように聞こえた。
思わず、出てしまったんだろう。
「俺らは会ったばっかりだ。
たまたま手を差し伸べたのが俺だったからだ」
「・・・違う。それは違います。
・・・でも、忘れてください」
そっと、そいつの顔を見ると
少し濡れた睫毛を見せて、ニコリと、笑っていた。
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作者名:あい | 作成日時:2021年1月19日 22時