21.分かってる。 ページ22
･
｢ったく、方向音痴が知らねぇ場所歩こうとすんじゃねぇよ｣
｢･･･すみません。
初めて、あんなに大きな喧嘩をして、こんな怪我したんです｣
へへ、と口元に手を当てて笑う。
その、手を当てる姿、
俺の周りにそんなことするやつあいつか、こいつしかいなくて。
重なっちまうんだ。
咄嗟に目を逸らして今冷やすもん持ってこさせてる。と一言。
ありがとうございます、そう笑うその人は
目の周り以外も、どこか顔が青ざめてる。
｢･･･そんなんで、家帰れんのか｣
｢･･･なんでしょうね。急に、息が出来なくなったんです。
あの場所が狭いことなんて、とっくに知ってたのに｣
だから、これはただの親子喧嘩ってことにしてください。
その言葉は、もう諦めだ。
あの家に囚われることを自分で選んだのではなく
それ以外、道がないことを知ってんだ。
いつから、そんな狭い世界で生きてんだ。
干渉するな。
干渉するな。
俺がこいつを気にかけちまうのは
あいつに、ミツバに似てるからだ。
それは、いい感情じゃねぇ。
｢匿ってやろうか｣
だから、そんなこと口から出したらダメだろうが。
なんで、嬉しそうな顔すんだ。
分かってるよ。
こいつが、Aが、俺に好意を向けてることくらい。
分かってんだ。
総悟が言うようにこいつがいつからか俺に惚れてることくらい。
気付いてんだ。
自惚れで終わってくれりゃ良かったのに。
こんなにわかりやすい反応されりゃ、誰だって気づくだろ。
誰だって、気にかけるだろ。
｢いいんですか？！｣
｢･･･あぁ｣
ダメだろ。
馬鹿野郎。
無駄に女、傷つけるだけだ。
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 227人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あい | 作成日時：2021年1月19日 22時
