16.ガキ ページ16
・土方十四郎・
煙草、我慢しなくていいですからね。
ガキ共の円の中に入ってなんの違和感もないようなお嬢さんがそう言う。
タバコの煙なんて知らねぇくせに
そんなもん吸ったら、体壊すだろ、なんて柄にもなく思った。
いつもなら、ガキの前だって好きかって吸うし
今だって、吸いたくて仕方ねぇってのに。
隣で小指を鼻に突っ込む銀髪がじっと俺を見てるのがわかる。
「やっぱ惚れてんじゃねぇの?それとも、病気でも持ってる系?」
「そんなんじゃねぇって、病気にでもしたらヤベぇんだよ」
「そんなすごい人なわけだ」
おらぁ興味ないがな、と、またガキ共に目を移すこいつ。
小指は鼻から離れない。
缶蹴りしましょーというそよ姫様に盛り上がるガキども。
ほんと、ガキみてぇだな、中身が25?
いや、違うな。
外見もまるで若く見えるが、それよりもきっと、中身の方がわけぇんだ。
家柄の常識を押し付けられて
外で遊ぶことも知らねぇ箱入り娘がガキの遊びでこんなに楽しそうなのは
その楽しさを知らなかったからだ。
この歳で、初めて経験することが多くあるからだ。
上着を綺麗に畳んで、庭へ向かうその人の後を追うように
広い縁側に腰を下ろす。
「そんなに見てなくても、ここは城ん中だぞ」
「・・・仕事だ仕事。」
重そうなもの着て、ガキみたいにはしゃぐその人は
さっき会った時みたいな、お淑やかさは少し欠けていて
どこか本来の自分を出しているような、そんな雰囲気。
「・・・土方くん、なんか臭うぞ」
「はぁ?」
「そういう意味じゃねぇ、なんかいる」
どういう意味だよと万事屋を見れば、いつもと違う目をしていて
確かに、どこからか漂う殺気を感じとった。
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作者名:あい | 作成日時:2021年1月19日 22時