イケボの彼はドSだったらしい。【川村壱馬】番外編 (ページ5)

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☆もう戻れないページ5

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壱「っ…玲於さん」

玲「ん？」

壱「…本当はずっと、気付いてたんですか」

玲「…何が？」

壱「…とぼけないで下さい」

玲「だから何が…」

すると俺の言葉を遮るように

ドンッと音を立てて立ち上がって。

俺はグラスからゆっくり目線を上げて、壱馬を見上げた。

壱「…俺例え尊敬する先輩の玲於さんでも、Aのこと奪うなんて絶対に許しませんから」

とうとう曝け出したか

…気付くのおせーっつの

そう言うと座り直して俯いた。

丁度そんな時、Aが戻って来て。

『…えっと、ああの、大丈夫…？』

俯く壱馬と黙って烏龍茶を飲んでる俺を目の前に

この重い空気を感じたAは戸惑ってて。

玲「大丈夫笑俺ちょっと外の空気吸ってくるわ」

『わ、わかった…』

これからどうするか、考えようと思って

席を外した。

外に出て目立たない店の路地裏に入って

携帯を取り出すと何件か通知とか来てて
それに返信したりして夜風を浴びていた。

もうそろそろ戻ろっかなと思って、丁度個室の
襖を開けようと手を掛けた時

中から壱馬が襖を開けた。

玲「うわびびった…え壱馬帰んの？」

見ると、キャップを被って鞄を持って
明らかにもう帰る格好だった。

壱「…失礼します」

壱馬はそれだけ答えると店の外へ出て行った。

わけが分かんない俺はとりあえず中に入ると、テーブルの上に壱馬が置いたらしい一万円札があった。

別に俺の奢りだからいいのになと思いながらAに目線を移すと、

さっきの壱馬みたく俯いてた。

玲「…A？どうした？」

声をかけても返事をせず動かないAを不思議に思って、Aの隣に移動する。

玲「A？顔上げて…」

するとゆっくり顔を上げて俺を見て。

玲「…A」

…泣いてた

白い頰を大粒の涙が濡らしていた。

次の瞬間、Aの細い腕が俺の首に回り

抱き付いた。

俺もそれに応えるようにゆっくり背中に手を回して髪を優しく撫でた。

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最初はただこの真っ白な存在を汚したいと思うだけだった。

ただのゲームだ。

…そう思ってたのに

この涙を見ると

” 俺が先に出会ってれば良かったのに ”

そんな思いで胸が苦しくなった。

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