【浦島坂田船】浦「あなたに恋して良いですか？」『私に恋してください』【うらたぬき】

32話 ページ38

笑顔で外にいる皆さんの様子を観察していると、

いつの間にか司さんが隣に座っていた。

司「Aちゃんって、どうして皆に敬語なんだい？」

特に嫌そうな感じな訳ではなく、ただ、純粋にそう思っていることが分かる。

『どうしてでしょうね…？もしかしたら、私の立場上の問題なのかも知れないです』

司「立場上？」

『はい。ほら、私って只の令嬢であって、うらたんの側に居るだけで。
皆さんは歌い手という存在で。
皆さんの歌声を聴くﾘｽﾅｰさんに歌を届けるといった
素晴らしい活動を通して知り合ったのですよね？』

司「ん〜、そうだね。全然初めましての人も居たけど…知らない訳ではないし」

『だからですよ。本来ならば皆さんの歌を聴くことが然程ない私が
皆さんとこうして過ごすことって、あり得ないじゃないですか。
リスナーさんにも失礼ですし。だったら、最低限のマナーは守らなければ、
ですから』

そこまで云って、司さんに笑顔を向ける。

けど、司さんは難しい顔をしていた。

朝食の際の光君みたいに。

司「それは…違うと思うよ？だって、敬語って壁を作るでしょう？
壁を作るって相手を警戒してるときとか、嫌いなときじゃん。
そういう意味で使ってる訳ではないって分かってるけど、そう感じるな、俺は。」

そういって少しだけ苦笑いをしながら此方に顔を向ける。

そうなのかな…。

敬語って壁を作るから、もしかしたら皆に関わり辛い印象を

作っているのかも知れない…

『そう、ですね…敬語…外せるよう頑張ってみます』

笑顔で司さんに語りかける。

そうすると司さんも笑顔で返してくれる。

司「じゃあ、手始めに俺に敬語使わないように。
あ、あと司'さん'じゃなくて、司'君'とかにしてね」

うっ…。分かってはいたけど本当にそう来るとは思わなかった…

『は……うん、分かった、よ』

まだたどたどしい私の背中を優しく叩く。

司「そんな感じだね。頑張ろう」

司さんのリスナーさんは司さんのこういう優しさに惹かれたのだろう…。

天「あ〜！見て見て96ちゃん！歌詞さんが
Aちゃんと仲良くしてる〜！！」

96「なにっ！？私のエンジェル！！」

ま「あ、狡い〜！僕も僕も！！」

何処かで気付いていたのかもしれない。

敬語よりも、普通に話した方が、話しやすいってことを。

『ふふ、落ち着いてよ』

これで、一歩。うらたんに近付いてたら、良いな……


____
暗い雰囲気漂ってますけど、違いますからね！？←

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