~Page:3~私と劇場とトリップと ページ5
気がつくと劇場が壊されそうになるところをいずみちゃんが止めていた。
話的にもそろそろ劇場に入るところだろう。
ほら、そんなことを考えていたら劇場に入っていく2人の後ろ姿が見える。
まあ、内容はわかっているけどあんな澄んだ瞳で見つめられたら見に行く選択肢しかない。
かといって、何もわからないままキャラたちに関わるのもなんか怖い.....。
ということで扉の近くに寄りかかって静かに見守ることにした。
「あーあ、どうしてあの子は僕のことを好きになってくれないのかなー。」
まあ、改めて見ても棒読みすぎる演技だけど.....。
いずみちゃんの顔は見えないけど明らかに不安そうなのが感じ取れる。
だけどやっぱり咲也くんの顔は輝いてる。ただでさえ澄んでる瞳がもっとキラキラしている。
あ、左京さんの劇場についてウンタラカンタラ始まった。ということは、もうすぐ劇団員探しが始まるってことか......。
このままいたら鉢合わせしちゃうどころか下手したら勧誘される可能性も.........。
それだけは阻止しないといけない気がする。私はとっさに物陰に身を隠した。
その直後、支配人といずみちゃん、咲也くんが飛び出していく。
咲也くん、私がいないのショックだったかな
なんてありもしないことを考える。
なんか、結局ついてきてしまった.....。ちょうどストリートACTをするところだったようだ。
見てるこっちが緊張してくる。
「やあ！僕は劇団MANKAIカンパニーの支配人だよ。これから路上オーディションを始めるんだ。」
あっちゃあ...。自己紹介から入ってる。
「え？！あ、ああ、ええと、そうねーではー」
いずみちゃんの大根っぷりも失礼ながらそのまますぎる。
と、視界の隅に青髪のヘッドフォンをかけた青年が見える。
『もしかして真澄くん？』
はっ思わず口に出してしまった。真澄くんは一瞬振り返ったがすぐに目線を戻す。
その先には当たり前にいずみちゃんがいた。
にしても、あまりにも夢が長すぎる。いや、こんなもんなのか？
でも、作画も妙にリアルだし..。
そして私の頭の中に一つの仮説が浮かぶ。
“トリップ”
もしこれが夢ではないのだとしたら、この説が一番有効だ。
でも、トリップってトラックか電車に轢かれてなるものなんじゃ......。(偏見)
こうしていてもしょうがない。とにかく何か証拠を掴まないと。
周りを見渡すとショーウィンドウのガラスが見えた。
『もしこれで自分の姿が見れたら....。』
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作者名：Fua | 作成日時：2022年8月23日 17時
