112話 ページ14
これで良かった。間違ってない。
そうでしょ…？
私は自分の部屋に帰って、耐えきれずに疼くまる。
『…ぅ、っふ、ぇ、』
情けない声が漏れる。涙が止まらない。
初めて、スマイルの手を払った。心が引き裂かれそうで、苦しかった。
コンコンとノックの音がする。
遠慮がちな、なかむの声がした。
「……あんまりズカズカきくのもどうかなって、思ったんだけど。良かったら、話聞かせて欲しいな」
『…ご、めんな、さい。言えません。…なかむ、私、メイド、辞めたいです』
「…それは、承諾できないな」
そう言われてしまったら、私はメイドでいざるを得ない。
スマイルとせっかく別れたのに。メイドのままだったら、また、危険に遭わせるかもしれない。
『何度でも、要望しますから』
「無駄。絶対、辞めさせない。Aの意思じゃないと思うから」
『……』
無言を貫いていると、諦めたのか立ち去っていく気配がした。
メイドを辞められるまで、まだ。スマイルを守れなくちゃ。
メイドでいなきゃならないなら、もっと。強く。
__
真っ暗になった、深夜。こっそり部屋を抜け出して、訓練場に行った。
もっと、強くならなくちゃ。メイド生活が続く限り、完璧に、みんなを、スマイルを、守らなくちゃ。
筋トレから始めて、幹部用に特別固く作られた稽古台を持ってきて、剣を持ってきて打ち込み稽古。途中で回数を数えるのをやめた。
稽古台が途中で壊れたので、新品を持ってくる。倉庫に腐るほどあるから、何個か壊れても大丈夫だろう。
次は、愛用のナイフを取り出して稽古台に向かう。
もっと早く。もっと、深く。相手をすぐに仕留められるように。
再び稽古台が壊れると、次は走り込み。その次は、夜なので音のほとんど出ない銃を使って射撃訓練。
思いつく限りの訓練をしていると、途中でガッと腕が掴まれた。
振り返ると、ゾムが顔を歪めて立っていた。
気配に気づかなかった自分を、恥じる。もっと、感覚を鋭敏にしないと。
「…やりすぎや」
『…なん、で。止めないでくださいよ。私は、もっと…もっと、強くならなくちゃいけないんです』
「なんで」
『だって、だって』
視界がグンと滲んだ。
『だって…！私の、せいでっ…スマイルが危険なことに巻き込まれる！なかむは、メイドを辞めさせてくれない、だから、…危険な目に遭わせるのは私だからっ、だから、強くなって、守らないと！』
支離滅裂に、叫んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 423人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らーて - 大変遅くなりましたが完結おめでとうございます！自分が完結まで見れたのがすごくうれしいです。番外編と外伝も更新頑張ってください。 (2022年9月18日 17時) (
レス) id: 50b204a28c (このIDを非表示/違反報告)
犬狼(プロフ) - すごい遅くなりましたが完結おめでとうございます！！！なかなかこんな神作に会えることは少なく、完結まで見れたことがすごく嬉しいです！！！ずっとニヤニヤしてました()2週目も楽しんできます！！ (2022年9月16日 11時) (レス) @page47 id: 3dd9b50437 (このIDを非表示/違反報告)
あああ - 完結おめでとうございます！ニヤニヤしながら見るくらいやっぱ最高でしたね！これから見返していこうと思います！ (2022年9月12日 22時) (レス) @page46 id: 08c0044447 (このIDを非表示/違反報告)
嶺亜 - 完結おめでとうございます‼︎初期から見てて物凄く好きだったので最初から最後まで最高でした‼︎ (2022年9月12日 14時) (レス) id: bfa035e3aa (このIDを非表示/違反報告)
葡萄ゼリー - 完結おめでとうございます!最初のときからすごく好きだったのですが最後まで最高でした...!!番外編も楽しみです!! (2022年9月11日 23時) (レス) @page47 id: c77a19be7e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らむね☆ | 作成日時：2022年8月17日 11時
