85話 ページ36
ひたすら走る。大丈夫、逃げられる。そう思いながら。
明らかに、二人。追ってきている奴がいる。異様に速い。私だって、常人じゃないほど速いのに。きっと薬を飲んでいるのだろう。徐々にだが、距離を詰められている。
もっと、もっと早く。早く、足を動かせ。
"「Aさん、大丈夫⁉︎誰かに追われてたりするなら、援護を送る!」"
"「無理せんで、大丈夫じゃなければ教えて!」"
幹部全員に繋がったままのインカムから、シャオロンさんを始めとする、いろんな方の心配する声がする。
『…追われて、ますね。オブシディアンの、部下だと、思います』
"「…ゾムが一番速い。頼む!」"
"「行ってくる!」"
肺が痛い。全力を出しても、相手の速さが勝ってる。
ロボロさんの焦った声がする。
"「AさんのGPSの動く速さが異常や!Aさん、本気通り越して無理しとるんやないの⁉︎」"
そうだ、インカムに、念のためにGPSをつけてもらったんだった。
『これでも、相手っ…だんだん、距離、詰めて、きてます…』
やばい、せめて、ゾムさんがくるまでは、
『はぁ、ゲホッ、ゲホッ』
息が切れる。むせそうになって、一瞬呼吸が乱れた。逃げきれないかもしれない。こんなに走っても、追いつかれそうなんて、
…今まで無かった。
もうあと十数秒で、追いつかれる。
『…はっ、はぁ、…足手まといにだけは、なるな』
自分に言い聞かせる。
…ゆっくり、立ち止まる。息を整えて、振り返り、ぐんぐんと迫ってくる敵に向かい、ナイフを構える。
『…かかってこい…!』
"「⁉︎まさか、⁉︎無茶じゃ、」"
私が戦うつもりだと察した、きんとき様の声。直後、スマイル様の声がする。
"「いや、もう、…ゾムさんが来るまで、耐えるしか、ない…!」"
何人かの幹部様が、ゾムさんの後を追ってさらに援護に行くと言って、、
私は、それが誰かなんてことに気を回すことは出来ず、ただ敵のナイフを受け止めた。明らかに、強い。
薬を飲んで強化しているのが、確信に変わる。
ワイテル国にだいぶ近いところまで来れているから、全力で駆けつけてくれたとして、あと数分でゾムさんはここに着く。そしたら、少しは、勝機が見えるはず。
『…ゲホッ』
あまりに、無理をして走りすぎた。喉の方から、血の味がする。
人生でこんなに走ったのは、初めてだった。そして、怪我もしていないというのに、追いつかれたのも。
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らーて - 初コメ失礼します。こんな素敵な作品が読めて僕は幸せです!。続き楽しみにしています。更新頑張ってください。 (2022年8月10日 15時) (レス) id: 50b204a28c (このIDを非表示/違反報告)
涼夏人 - 失礼します。初コメです。この作品、神!神作!続き楽しみにしています。頑張ってください! (2022年8月8日 16時) (レス) @page31 id: 8404a67f98 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆ - おかえりなさい!!自分もめっちゃ低くてやばかったです!ゆっくり待ってます!頑張ってください (2022年6月29日 14時) (レス) @page7 id: d3fac2225a (このIDを非表示/違反報告)
天音(プロフ) - おかえりなさい!!僕の方がテストやばかったので安心してください…☆ゆっくりで大丈夫なので!!更新待ってます!、 (2022年6月28日 22時) (レス) @page7 id: 511b9233eb (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - おかえりなさい!お話はゆっくりで良いのですのよ!おかえりなさい(о´∀`о) (2022年6月28日 19時) (レス) @page7 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らむね☆ | 作成日時:2022年6月12日 11時