7話 ページ7
スマイル様の部屋に行ってノックすると、すぐに扉が開いた。
「…これ。食べ終わったから、運んでほしい…」
『承知いたしました』
私が受け取って歩き出そうとすると、
「っぁ」
『?』
振り返ると、スマイル様がおずおずと口を開いた。
「…あの…今日の、朝ご飯、多分きりやんが作ってくれたやつだから…美味しかった、ありがとうって…伝えてほしい」
まだ、幹部様たちと、スマイル様と、関わりが浅い私でも分かる。
これはきっと、大きな進歩。
『きっと、喜ばれますよ。今後も何か伝言等ありましたら、なんなりとお申し付けください』
微笑むと、スマイル様もほんのわずか、口角をあげてから部屋の中に入っていった。
足早に食堂へ戻るが、もう幹部様たちは誰一人としていなかった。
早く伝えたかったのに。昼食の時間に伝えるしかないか。
スパイとして、いつ情報を探すかも問題だ。
食事時間やその前後は、スマイル様以外の幹部様たちは全員食堂。他にも多くの兵やメイドが食事をとるため、警備が手薄になる部分が増えるはず。ただし、人の移動は増える。
食事時間外であれば、みんな仕事で所定の位置にいるから、警備はしっかりしている場所が増えてしまう。ただし、人の移動は減るから、任務中誰かに出くわしたり見られたりする心配は減る。
今、一旦動いてみるか。
人通りがほとんどない廊下を歩く。不審な動きをしているように見えないよう注意しながら、監視カメラの位置を確認していく。
まず、情報が一番ありそうなのはやっぱり情報管理室。
廊下を警戒しながら歩き、情報管理室に着くと、中から話し声が聞こえてきた。
「…スマイル様って、マジで役に立たねーよな」
…⁉︎
耳を疑う。思わず警戒を忘れ、扉に耳を当てた。
「そうそう!もうあれから四年だろ?迷惑な話だよな、人と関わらないし、声出さねーし」
「他の幹部様もさぞかし迷惑だろうに、早くあんなやつ捨てればいいんだ」
「ただ、反乱で家族が死んだだけじゃねーか」
ぎり、とわずかに音がして、自分が歯を食いしばっているのに気づく。
ただ、反乱で家族が死んだだけ?この人たちは、知らないの?スマイル様がどうしてこんなにも苦しんでいるか。
てっきり、スマイル様はみんなに慕われているんだと思っていた。
幹部様たちがあんなに大切に思っている人なのだから。
だけどそうとは、限らなかった。
とにかく今は、部屋に帰ろう。一旦、落ち着かなければ。
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すみれいん(プロフ) - らむね☆さん» いえいえ!私も言っていいものか迷っておりまして…。もしあれならこの誤字のやり取り消してもらって大丈夫ですので!! (6月7日 23時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
らむね☆(プロフ) - すみれいんさん» わわわ…ありがとうございます。たまに気付いてない誤字あるんですよね…!指摘凄く助かります! (6月7日 21時) (レス) id: 5aa85bc4da (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - たまに読み返しに来てます。いつも読みふけって忘れてしまうのですが47話の大先生さんの件のお話のciが訂正するところ、こいつの名前っていう所がこいつほになってますよ(こそっと) (6月7日 15時) (レス) @page47 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
だいふく - smさんと夢主はよくっつけ〜!めっちゃラブラブカップルになる予感!これからも投稿頑張ったください! (2023年1月5日 21時) (レス) @page50 id: 8b39de642b (このIDを非表示/違反報告)
すみれ - 続きまってますワクワク (2022年10月5日 17時) (レス) id: a70cb7c9e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らむね☆ | 作成日時:2022年5月19日 15時