初恋と私と彼と (ページ17)

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じゅうろくわページ17

櫻井さんたちの忠告があってよかった。

そう思ったのは、話を聞いた2日後のことだった。本当ならあんな忠告、役に立たない方が良かったのに…とやさぐれてしまうのも、無理はないだろう。

自宅のマンションの入り口に、女性が座り込んでいたのだから。

珍しいお酒の誘いに乗って、下野さんと梶さんにご馳走になって、うきうき気分で帰宅した私。こんなことならもっと早く帰ってれば良かったかも…あ、でも潤兄今日は櫻井さんと呑んで泊まるって言ってたような…ならいいかなぁ、なんて、お酒の入った頭でぼんやり考える。

非常事態にもかかわらず、私は不思議と冷静だった。お酒、調子に乗らずにちょっとしか飲まなかったせいだろうか。潤兄を困らせやがって…ぐらい思うと思ったんだけどな。

いつも通り、慣れた動作で鍵を取り出し、自動ドアを開けようとする。
すると、座り込んでいた女性はいきなり立ち上がり、私の腕にしがみつく。思わず舌打ちが漏れそうな行動に、やっぱ私怒ってたかも、という苦笑と、女性の非常識な行動に顔をしかめてしまう私がいた。

けど、お陰で酔いが覚めた。

「すみません、離していただけますか」

「あの、潤…私の潤はどこ！？」

冷たい視線を送ると、一瞬ひるんだ様子を見せたが、大声で叫び始めた。テメェの潤兄じゃねえよ…1番そばにいるはずの私が手に入れられない人なのに。なんて、醜い感情を押し込めて、もう一度離してください、と言う。

「嫌よ！！アンタが…アンタが私の潤を奪ったんでしょう！？ねぇ…ねえ！！」

ヒステリックに叫ぶ女性。

届くはずのない想いを抱いたオンナの姿は、酷く醜く見えて…それで、私と重なって見えて、この私の想いまで、醜いんじゃないかって、哀しくなった。

私の方がそばにいたのに。

私の方が潤兄のこと、知ってるのに。

私の方が潤兄に、可愛がられてるのに。

私の方が潤兄のこと好きなのに。

もしかしたら、嫌われるのが、離れ行ってしまうのが怖くて、何もできなかった私よりも、この女の人の方が。

間違っているのかもしれないけど、黙ってビクビクしてた私より、行動できたこの人の方が。

__________じゅんにいに、ふさわしいのかもしれない

あたまが、

しこうが、

ぜんぶぜんぶ

とんでいった。

そんな気がした。