居候と末っ子 ページ35
ロキside
貴「……」
ロ「…えーっと、あ、いい天気、だね!」
貴「………」
ロ「…」
本日、普段ならやたらと人がいて賑やかなこの家には、オレとオレを嫌う末っ子ちゃんしかいない。
まだ名前すらろくに聞けてないのに、しかもあの時のことなんてろくに覚えてないし…こうもだんまりされては気まずいったらありゃしない。
ロ「オレ、ロキ…」
貴「知ってる」
ロ「あ、だよね…」
うわぁぁぁぁ!誰か早く!この際師匠でもいい!帰って来て!切実に!お願いします!!!
貴「……セイラ」
ロ「え、」
貴「だから……セイラ。私の名前…」
ロ「え、あ!セイラ…ね。うん…」
やっと名前聞けた…。
ロ「綺麗な名前だね。お父さんとお母さんが?」
貴「母さん。…貴方は?」
ロ「オレは…自分で」
貴「え…」
ロ「生まれた時から貧民街だったし…親って存在もイマイチよく分かんない」
事実、オレを最初に見つけた仲間の話だと、オレは路地裏で箱詰めにされてたらしい。泣き声を聞いて探してみると、生後半年も経ってないオレがいたんだと。だから、親の顔も分からなければ名前も、オレが望まれて生まれたかすらも分からない。
貴「…ごめんなさい。話しづらいこと、話させた…」
ロ「いや、いいよ。別に、親がいなくても仲間がいたし。楽しかったしな」
貴「…その仲間、今はどうしてるの?」
ロ「みーんなオレが殺した」
貴「…は?」
ロ「オレの仕事が上手くいくようになってからさ、1番年下なんだから恩返しも兼ねて金を分けろって。最初はオレも実際にそう思ってたから従えてたんだけどさ、オレの金があるからって仲間は誰1人自分で稼ごうとしなくなってさ。だんだん、こう…違和感がね」
貴「わ、私…また地雷…」
隣に目をやると少し目を潤ませてわなわなと震えているセイラちゃん。最初に比べると随分表情が出てくるようになった。
ロ「これだけは信じて欲しいんだけどさ…
オレはセイラちゃんや師匠達を絶対に裏切らないよ」
まっすぐ目を見て言った。たとえまだこの子に信用されてなかったとしても…
どんな不満の言葉が返ってくるのか内心怯えていると、ふっ、という気の抜けた声が聞こえた。
顔を上げると、セイラちゃんは…
ロ「へ?笑っ…」
貴「へへっ…これからよろしくね。ロキくん」
ロ「!…あぁ。こちらこそ、よろしく」
この日からというものセイラちゃんはやたらオレに懐き、それを見た師匠に特訓を倍にされたのは言うまでもない…
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作者名:バレーノ | 作成日時:2019年2月1日 15時