026-3 ページ43
.
あくまで憶測ではあるが、何らかの形で、2人は壮馬くんのお宅に訪問していたのだろう。
帰宅のためなのか、一時的な外出なのかはわからないが、外に出るため扉を開けたらぼんやり歩いていた私に当たりそうになった。
きっとそういうことなのだろう。
これすら妄想でなければ。
そうなると、中には壮馬くんもいるはずで。
また会いたい気持ちが出てくるが、彼がこのお二方に、ひいては周りの人達に交際のことを言うつもりなのか、隠していくつもりなのかを私は知らない。
彼の職業上、真っ先に確認しておくべきだったのに。
あの壮馬くんの彼女ということを、ちゃんと自覚するべきだった。
「私がぼんやりしてたせいで、ご心配お掛けしてすみません」
「いやいや、こちらこそ、ほんとすみません」
目の前のお2人に頭を下げると、扉を開けたであろう江口さんが間髪入れずに手を振って「こっちが悪いんで」と申し訳なさそうに頭を下げる。
本来なら、このお2人に会えることがどんなに嬉しいことか。
それなのに私の頭の中は、すぐにここから離れなければということでいっぱいだ。
もし、隠していくつもりだったとして、今知らないふりや、ただのお隣さんだと言われてしまうことを考えたら、怖くて仕方ない。
「いえ、本当に大丈夫ですので！お気になさらないでください」
そう返しながら、どうやってこの場を去るかなぁと考える。
この流れで「では、失礼します」と言おうと口を開いたところで、部屋の奥から声が聞こえてきた。
「何何？どうかした？」
それは紛れもなく、私が今1番会いたい相手のもので。
声が聞こえただけで、少し胸が高鳴るのを感じた。
「なんか、江口さんが女の人に扉ぶつけそうになったっぽい」
「え、どういう状況？」
壮馬くんと界人くんの会話が、僅かに聞こえてくる。
壮馬くんに会いたいなぁ...って気持ちがぶり返して来るのを感じて、慌てて目の前の江口さんを見上げた。
「あの、ご心配お掛けしてすみませんでした。では、失礼します」
そう言ってお辞儀をし、踵を返したところで、ガタガタと大きな物音を立て、江口さんを押し退けるようにして壮馬くんが中から出て来た。
あまりの物音にびっくりして、ついそちらを見てしまう。
驚きの表情をした壮馬くんと、見事に視線が合った。
「Aさん!?何で!?」
「えっと、イヤホン仕舞ってて、扉開くの気付かなくて...でもぶつかってはないです！」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 255人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うらら(プロフ) - りなさん» コメントありがとうございます。全て読んでくださったなんて、すごく嬉しいです！本当に理想ですよね...！のんびり更新になりがちですが、お付き合いいただけると嬉しいです！ (2023年5月3日 21時) (
レス) id: 883b848a52 (このIDを非表示/違反報告)
りな - 前作から全部読ませていただきました。もう最高過ぎて終始ニヤニヤがとまりませんでした。隣の部屋に推しが住んでたとか理想のシチュエーション過ぎます。続き楽しみにしています。 (2023年5月3日 0時) (レス) @page33 id: 152e2618cd (このIDを非表示/違反報告)
うらら(プロフ) - ななはさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！コメントいただけて、とても嬉しいです。更新頑張ります！ (2023年4月23日 10時) (レス) id: 883b848a52 (このIDを非表示/違反報告)
ななは(プロフ) - 一気読みしちゃいました…！！めちゃくちゃ好きです！！応援してます！！！ (2023年4月23日 1時) (レス) id: d3c7f32016 (このIDを非表示/違反報告)
うらら(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます！修正いたしました💦 (2023年2月28日 14時) (レス) id: 883b848a52 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うらら | 作成日時：2023年2月27日 22時
