29.なんとかなるみたいです。 ページ30
「……じゃあ、いくよ」
私の腕の中には、未だ気を失っているクラスメイト(女子)。ここは公園の女子トイレ。そう、最初に私たちが『こっち側』にやってきた時のトイレ。理紗と一緒にトイレの入口まで移動して、
「今から帰ります!」
同時に宣告する。周りが明るくなって、目を閉じる。足が地面から離れた。
着地の感覚。一呼吸置いて目を開ける。右手にはキーホルダー、肩にはカバンが戻ってきている。色々気になるけれど、それは作戦のあとで。キーホルダーをカバンに入れてから、クラスメイトをトイレの床に寝かせる。
「誰もいない?」
「大丈夫」
見張り役の理紗が、小声で問題ないことを教えてくれた。寝かせ方を工夫して、いい感じに偽装する。……『よい子はマネしないでね』ってやつを今からやる。
「じゃあ、かけるよ」
理紗が携帯電話を取り出した。ロックを解除する前に、電話をかける。電話番号は、110。私はクラスメイトのそばにしゃがむ。呼吸はある、大丈夫。
「あの……公園の女子トイレに、人が倒れていて……あっ、〇〇公園です……はい……」
パトカーと救急車が公園にやってきた。私たちはでっち上げの状況説明をする。『公園のトイレに入ったらクラスメイトが倒れていた』ということにしてしまうのが一番安全だと、蒼太が言ったのだ。ちなみに蒼太と健は、別の場所で同じことをしている。私たち4人に対して2人というのはちょっと嫌だった。これからもこういうことをすると考えると……ちょっと、ね。
色々と終わって(同乗しろとは言われなかった)解放された私たち。今度は健たちに電話をかける。
「終わった?」
『終わった』
「こっちは問題なかったよ」
『大丈夫だ!』
あっちもこっちも、問題なし。やれやれ上手くいった。
『このまま解散でいいかって、蒼太が』
「理紗、解散でいい?」
「うん」
「こっちは大丈夫、どうしてもなら連絡するし」
『りょーかい、じゃあ解散で』
まるで慣れたかのような会話を終わらせて、私たちは帰路についた。
駅に向かう途中、理紗が迷惑かけてごめんと言って謝ってきた。迷惑だなんて、いつも助かっているし、元々防御力が低かったのは理紗のせいじゃないから仕方がない、謝らなくていいよと返しておいた。笑ってくれたから、きっと大丈夫。
2人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シュウ - 待っ…面白いです! (2021年9月3日 0時) (レス) id: f920010a89 (このIDを非表示/違反報告)
恋 - 読んでいて楽しいです!こんなおもしろい作品をつくってくれてありがとうございますっ!これからも応援してます! (2021年5月8日 20時) (レス) id: b0074abe1a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ