11.そんなことがあるんですか。 ページ12
間違いなく、落ちた彼だ。なんでここに……さっきまではいなかった筈。扉の前に人が寝ていたら普通気づくでしょう。
「この人……さっきの穴に落ちてた!」
「先生と、あと一人はいないみたい……」
私と理紗はほぼ同時に言った。それを聞いて蒼太が考えているのがわかる。ウィンドウは空気を読んで、さっきの文章のままでいた。
「僕達は……彼らが連れていかれた世界に来てしまった、という認識でいいのかな……?」
ウィンドウの表示は、『そんな感じです』に変わった。消えた人たちが集まる世界があるという噂は、本当だったようだ。ただ、そんな世界に今私たちがいるということは、つまり……私たちも彼らと同様、帰れないということになるんじゃ……。そこまで考えて、背筋が寒くなる。嫌だ、帰りたい。いろいろとやりたいゲームが残っているのもあるけど、もっと単純に帰りたい。こういう話の主人公たちは、内心ではみんな帰りたがっているんじゃないのかな、とも思った。
『帰れますよ』
「どうせ、魔王を倒してからとかいうんだろ?」
まあ、そうなるよね。健の言葉に合わせるように、私たちはウィンドウを見る。しばらくそうして、ウィンドウをにらんでいた。落ちたクラスメイトはまだ目を覚まさない。
ウィンドウがふっと文字を消し、次に出てきたのは、
『いえ、出入り自由です』
の文字だった。
出入り自由とか、あまり聞いたことないんですけど。
「あの、じゃあ……今すぐ、帰りたいです」
理紗が言うと、すぐに私たちの周囲が光りはじめる。ここに来た時の感覚とよく似ている。蒼太がクラスメイトを抱えようとしているのが見えた。すぐに健が向かう。これで帰れるとすれば、きっと彼もいっしょに……
光がまた強くなり、眩しさに目を閉じた。
「舞ちゃん?」
声が聞こえて目を開ける。風景はあまり変わっていないけれど、さっきまでの嫌な雰囲気が消えていた。もしやと思って服装を確認。制服に戻っている。あの杖もないし、さっきワープした場所そのまま、ちゃんと校内にいる。他の皆も同じだけど、いくつか違うところがあった。
男子2名はクラスメイトを抱えていた。やっぱり一緒に帰れるみたい。そして、私たちは見覚えのないキーホルダーを握りしめていた。この形は間違いない、あの杖だ。ここに来た時に触れた剣のキーホルダーは、健の右手に収まっていた。
私たち、本当に帰れたんだ……
12.なんだったんですか。→←10.つまりどういうことですか。
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シュウ - 待っ…面白いです! (2021年9月3日 0時) (レス) id: f920010a89 (このIDを非表示/違反報告)
恋 - 読んでいて楽しいです!こんなおもしろい作品をつくってくれてありがとうございますっ!これからも応援してます! (2021年5月8日 20時) (レス) id: b0074abe1a (このIDを非表示/違反報告)
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