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安田side
「楽器、盗まれんで」
『…待ってください…』
なんで。
「俺、もう帰るから」
『お願いします…ちょっとだけ…話をさせてください…』
そんなん言われたら、諦められんくなるやん。
ケジメつけなあかんのに。
「……1回家帰って車で来る。これ連絡先。なんか狭い道入っといて」
そう言い残して、
何か言いたげなAちゃんを置いてすぐに家に帰る。
「ちゃちゃー、もうちょっと待っとってなー？」
ﾁｬ「ｸｩ〜〜ﾝ」
ほんまにすぐに、
急いでリビングに荷物をぶん投げて、
車の鍵と財布とケータイだけ持って家を出て、
無我夢中で車を走らせる。
はやく逢いたい。
PRRRRRRR…
「もしもし」
《あの…駅の南口からちょっと歩いたとこのコンビニの裏にいます…》
「ん。わかった。このまま繋いどくわ」
はい。と電話越しに声が聞こえる。
「あ、おった。」
《え？》
「こっちー」
Aちゃんを車に乗せて、
しばらく走り続けた。
『…あの』
「…僕の家で話そうと思ってんけど、あかんかな？」
『え、その…』
「あ、ごめん。犬苦手やった？」
『いや平気ですけど…』
目が潤んでキラキラしとる。
「…まぁ、この辺でええか。」
広い駐車場の端の方に車を停める。
「…さっきのライブ、なに？」
『えっ…』
あぁもう、言葉選び下手くそや。
「……あんなん歌われたら期待してまうやん」
『………期待、してくれないんですか？』
この子こんな技どこで覚えてきたんや。
「男の子は？」
『本当に何もないんです。大阪の時も、人混みではぐれないように手を握ってくれてただけで』
ネックレスはどないしたんやろうか。
「…ネックレス」
『あ、そのことなんですけど…』
Aちゃんがゴソゴソとポケットを漁る。
『…落として、拾うまでの間に踏まれちゃって…』
手のひらに乗せられた俺のあげたネックレス。
『ごめんなさい。せっかく安田さんがくれたのに…取れたの気付かなくて…』
「…ほなほんまになんもないんやな？」
『はい…』
「………よかった」
思わず抱き寄せてしまう。
「……なぁ」
『…はいっ』
「………もし俺がAちゃんのこと好き言うたらどうする？」
『…………へ？』
「初めて会った時あるやろ。ライブの時」
『はい…』
「…一目惚れしてその時からずっと好きでした。付き合ってください」
『………はいっ…(泣)』
よかった。
ほんま、よかった。
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作者名：ゆりかご | 作成日時：2021年1月2日 2時
