56 ページ6
.
「っ…(泣)」
あ「安田さん？」
「！…ｸﾞｽｯ…ありさちゃん。どないしたん？」
あ「なんで…泣いてるんですか…？」
変装しててもわかるありさちゃんの丸い目。
ｸﾞｲｯ…
あ「ん…んん…やすだ、さ…」
「…こっち。行こ」
・
・
・
あ「あ…ん…はぁ…ん…」
「んっ……ぁかん…」
・
・
・
あ「私がそばにいてあげましょうか…」
・
・
・
「…ってことがあって…」
『……』
「せやからほんまに、あの時のやつはちゃうねん。」
『…安田さんは』
安田さんって呼んだ。
『…なんでそんなに私に執着するの…？』
「…え？」
『他にも色んな女優さんとかモデルさんとか…出会いはあるはずなのに…なんで私なの？』
なんでって。
「……理屈とか…そんなんじゃ片付けられへんようなことやねん…」
『…』
「もどかしいほど好きで…ずっとそばに居たいと思う…」
『…(泣)』
「Aはちゃうかった？」
俺はずっとそうやった。
まさかライブでファンに一目惚れするなんて思ってもなかったけどな。
けど知り合って、付き合って、
Aを知れば知るほど大きな沼から抜け出せなくなっていた。
『…ずっと…好きだったの…(泣)』
「…おいで」
優しく抱きしめて、零れる言葉を受け止めた。
『…あんな振り方して…自分勝手だってわかってるの…けど…それでもあれからずっと好きなままで…(泣)』
「うん…」
『…ライブ…来てくれなかったら諦めようと思った…(泣)』
あーもう。
このもどかしい感じ。
「……ありさに怒られてん」
『…ｸﾞｽｯ…』
「Aのことなんも見てへんねやら戻る権利ないって」
ありさにも申し訳ないことした。
「それで曲聴いて…ほんま嬉しかった…」
『………しょう、ちゃん』
「〜〜！…はい」
久しぶりに名前で呼ばれて舞い上がった。
いい歳した男がなにしてんねやろ。
『しょうちゃん…(泣)』
「うん…」
Aのあたたかい掌が背中に触れて、
お互いきつく抱きしめ合う。
「…もう1回…やり直そう…」
『うん…(泣)』
あと少しすれば日付が変わる。
『……キスして、ん…』
深く、深くキスをして、
2人だけの世界に入り込む。
『ん…おはよ…』
「おはよ」
俺は、久しぶりに幸せな朝を迎えた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 70人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆりかご | 作成日時：2021年1月21日 21時
