【H×H】美少女はクロロの弟子！せぶんす！

171 「何度も何度も夢に見ては後悔と悲しさと怒りと憎悪で心がいっぱいになるんだ」 ページ25

【シビュラside】

一面の赤、だった。

夕焼けと、お母さんの血で染まった景色が。

「逃げて！！」

耳をつんざくような高い声。悲鳴みたいだ。

「おかあさん」

お母さんの首を掴んでいる、大きな男の人がこっちを見た。

「……スカーレットのガキか」

「ねぇ、やめて、おかあさんが、いたい」

「お前も不幸だな。こんな女の子供で」

男の言葉の意味はわからなかった。

ただ、血だらけで、呻いていて、四肢すら捥げてしまいそうなくらい怪我をしたお母さんが心配で、怖かった。

「ダメ……見てはダメ！」

目の前が一層赤くなるような気がした。

変に頭が痺れて、何も考えられない。動けない。

「シビュラ……！！」

お母さんの縋るような瞳が、血の色をしていた。

「なるほど、……そのガキも緋の眼ってことか、儲けた」

男が笑った気配がした。

「安心しろ、このガキもすぐにお前と一緒にしてやる」

「……シビュラ、逃げて……お願い……ーーー……！！」

男の掲げた刃物が、お母さんの首を貫いて、殺した。

「あ……？」

どちゃりと音を立ててゴミの中に落ちた首を、男は拾い上げて、心底嬉しそうな、恍惚とした表情を浮かべた。

「……おか、あ、さ、ん」



お母さん？



「おかあさん」



人間は、首を切られると死ぬ。

そう教えてくれたのはお母さんだ。

お母さんの首が切られた。

それは、だから、つまりーー



おかあさんは、死んじゃった？？？



「次はお前だ」



男はお母さんの頭から、目を2つ抉った。

お母さんの首が私の足元に投げ捨てられる。

がらんどうの眼孔が、純心無垢な私の心を吸い込んだ。



「ゆるさない」



母の死体から対のダガーナイフを奪い取る。

すごく重いはずだけど、そんなものも感じないぐらい、力が湧いていた。



「おかあさんを殺した。ゆるさない」



身体の奥底から、熱くて痛いぐらいの気持ちが溢れて止まらない。

気持ちは蜷局を巻いて、ぎりぎりとねじ切れて、ダガーナイフの刃みたいに鋭くなって。



「ゆるさない、ゆるさないーーゆるさない！！」



気が付いたら、私は男の首にダガーナイフを振り下ろして、その頸椎を砕いていた。

かろうじて胴体とつながっていた筋がぷちんと音を立てて切れ、ごろりと男の頭が転がった。

「……しんだ」

ダガーナイフを手放そうとしたけど、ねばつく血と硬直した筋肉のせいでできなかった。

「やったぁ」

だらしなく弛緩した男の顔が面白くて、わたしは笑った。

「おめめ……」

その後、お母さんのえぐられた緋の眼を探したが、見つかることは無かった。

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