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JK side
事務所に着いて、ユンギヒョンに言われて仕方なくAのレコーディングを少しだけ見ることにした。正直早く隣の部屋でボイトレでもしたいところだけど、ヒョンが俺にこうやって命令するのも珍しくてなんとなく断れなかった。
「A、ラストもう1回だけいいか」
「はい」
ペットボトルの水を飲んでいたAはヘッドフォンを耳につけた。どうやら俺が入ってきたことには気づいてないみたいだ。
「お願いします」
目を閉じ大きく息を吸いこんでAは歌い始めた。
普段の自信なさげな様子からは想像できないような、のびのびとした歌声。リハーサルでも本番でもAの歌なんて死ぬほど聴いてきたはずなのに、衝撃で俺はAから目を話すことができなかった。
スピーカーから流れるしっとりとしたバラード調のメロディー。防弾少年団が歌うことはないだろう失恋についての歌詞。Aのまっすぐな歌声。
すべてが俺にとっては新鮮で、さっきまでの嫌がっていた気持ちなんてどこかに行ってしまった。
歌い終わったとき、Aの頰に涙の跡が残っているのが見えた。
「素晴らしい! 今までで1番よかったよ!」
「ありがとうございます」
プロデューサーもベタ褒めだ。ブースから出てきたAは、やっと俺に気づいて目を見開いた。
「ジョングク……?」
「……お疲れ様」
我ながらなんて優しさのない返事だと思う。それでもAは特に気にする様子もなく「ありがとう」と少し微笑んだ。
「お疲れ、これで終わりでいいぞ」
「はい、ユンギオッパありがとうございました」
そう言って頭を下げたAの肩を軽く叩いて、ヒョンは俺に顔を向けた。
「な、良かっただろ聴いて」
ニヤリと笑ってそんなことを言う。Aが焦った顔をしているのが見えて、自分でも何故かわからないけど自然と言葉が出てきた。
「良かったです」
Aが驚いた顔をしているのを横目に、俺は「失礼します」とスタッフさん達にも頭を下げてレコーディングルームを出た。
俺もあんな風に歌いたい。そんなことを考えながら。
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?(プロフ) - ウラツクで一番好きなお話兼一番更新を楽しみにしてるお話です!続きが気になりすぎてはじめてウラツクでコメント残しました!笑 これからも無理せず頑張ってください! (2019年8月23日 23時) (レス) id: 7911c797b0 (このIDを非表示/違反報告)
Yuki - 更新お疲れ様です!お返事嬉しいです!はい!楽しみにしてます! (2019年6月24日 22時) (レス) id: 5ccac3abe1 (このIDを非表示/違反報告)
Yuki - 更新お疲れ様です!頑張ってください! (2019年6月19日 22時) (レス) id: 5ccac3abe1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美月 | 作成日時:2019年6月16日 17時