さよなら安寧こんにちは非日常 (ページ1)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:1,598 hit

1 ページ1

春野理央、17歳。どこにでもいる普通の女子高生。
しかし、幸か不幸かそんな平凡な日常は終了する。
本人は、一切気づいていないままで。

学校からの帰り道。いつもと同じ通学路。あまりにも平和で、つい欠伸が出た。目をこすりながら路地の前を横切って、ふと違和感を感じて立ち止まる。

路地に目を向ければ、野良猫が歩いていた。この辺りでは珍しい、とそう思って通り過ぎようと動きだしかけた足は、猫のそば、ここからは影になっているところに目を向けてすぐに止まった。
人の足のようなものが見える。いや、十中八九そうだ。誰かが倒れている。

面倒ごとの予感がしたけれども、放っておくことはできなかった。人と思しきものに駆けよれば、案の定だった。自分と同じくらいの年齢に見える男子が倒れていた。黒いスーツはところどころ切れていたり汚れていたりするし、頬には血がついている。

面倒ごとの予感は想像以上に的中してしまった。見たことのない顔だし、こんな時間にスーツ姿で倒れているのだから普通の高校生ではないことは明白だ。そもそも、何をすればこんなぼろぼろになるのか。理央には見当もつかない。
しかし、このまま放置するのも気が引けて、考えた末に家へ連れて帰ることに決めた。幸い、今日は両親が帰ってこない。きっと、見つかったら何か言われるに決まっている。犬や猫を拾うのとはワケが違うのだから。

家がもうすぐそことはいえ、意識がない人間は重い。どうにかこうにか連れて帰って、階段の上の自室まで引き上げた。ベッドに半ば倒すようにして寝かせ、汚れているジャケットは脱がせて、頬の血はぬぐった。呼吸が正常なことを今更ながらに確認して少しだけ安心する。
ジャケットはしわにならないように干しておいたほうがいいだろうか、とそう考えて持ち上げてみれば、なんだか重い気がした。内ポケットが膨らんでいることに気付いて、手で探ってみる。どうやら金属製の物が入っているようで、ゆっくりとポケットから出してみた。

「―――――ん？」
理央が目を丸くする。自分の手に収まっているのはどう見ても拳銃だった。フィクションでしか見たことのないそれに思考が停止する。まさか、悪い夢を見ているのかと思ったけれど、ひんやりとした感触はどう考えても現実のものだった。