桜の花は、淡い恋色。２【鬼滅の刃】 (ページ9)

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見えない溝　　　　其ノ肆拾漆ページ9

(悪いことしちゃったな・・・)

Aは蝶屋敷の帰り、夕日がかった空を見上げた。

呼吸を見せてほしい。

そりゃあ、私だって見せたいよ。

炭治郎くんも言ってくれたように、美しい桜を見せたい。

でも、いくら鍛錬を積んでもできない。

私が悪いのに、炭治郎くん、申し訳なさそうだった。

そんなことより・・・。

Aはふと立ち止まった。

先程から疑問に残っていることが一つある。

(どうして炭治郎くんの動きは、錆兎に似ていたんだろう)

Aが炭治郎の動きを読めた理由。

それはわずかに残る記憶が引き起こしたのだ。

(鱗滝さんに教わったから？

　でも、錆兎の動きは普通じゃできない)

と、前に見覚えのある人影が見えた。

「義勇！」

Aが呼びかけると、義勇はゆっくりと振り向いた。

「・・・Aか」

そう言うなり、義勇はまた歩き出し、Aはその隣に並んだ。

「任務の帰り？」

「ああ。・・・Aは？」

「蝶屋敷の帰り。しのぶちゃんに用があって」

しばらく沈黙が続いた。

「本当に男らしくなったよね。昔はあんなに怖がりだったのに」

「昔の話は止めろよ。それに、俺は錆兎みたいな男にはなれない」

義勇は一瞬、Aに振り向くと、

「じゃあ、気をつけて帰れよ」

目も合わせずに足を進めた。

「どうして私を避けるの？」

Aの声に、義勇は立ち止まった。

「私は思っていない。義勇のせいだなんて」

「・・・俺にはお前と会う資格などない」

冷たい風が吹いた。

「・・・この前、休みをもらって鱗滝さんの所へ行ったんだ。

　お前も行ってみたらどうだ？」

それだけ言い残し、去って行った。

「義勇・・・」

彼の去る背中は、いつまでも寂しそうだった。