桜の花は、淡い恋色。２【鬼滅の刃】 (ページ8)

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心に咲く彼岸花　　其ノ肆拾陸ページ8

「やああ！」

炭治郎が振りかかり、Aはそれを受け止めた。

(くっ・・・。押せない！なんて力だ・・・！)

Aが押し飛ばすと、倒れることなく立ち上がる炭治郎。

(ここは全身に血を巡らして、少しでも速く)

炭治郎の脳裏に、昔の出来事が蘇る。

(そういえば、真菰が言ってたな。

　錆兎は技はもちろん、速さも大事にしていると)

「ぬああ！」

力強く地面を蹴り、少しでもAの近くへ。

(よし、追いつけたぞ！)

炭治郎が振りかざしても、弾き飛ばすA。

(Aさんの動き・・・。

　まるで桜が舞うような・・・)

攻守を繰り返すうちに、炭治郎は隙を見つけた。

(今だ！)

とっさに木刀を振り上げる！

だが、まるでそれを分かったいたかのように

Aはひらりと避け、木刀を炭治郎の前で止めた。

「え、炭治郎が負けたの？嘘でしょ？」

善逸がつぶやく。

(俺・・・。Aさんに一つも近づけなかった)

悔しさを見せる炭治郎に、Aは微笑んだ。

「あれ程の動き、普通じゃできない。

　炭治郎くんなら、きっと強くなれる」

炭治郎は明るい表情を見せた。

「はい、ありがとうございます！」

アオイが団子を持って来てくれ、休憩することになった。

「Aさんはどの呼吸を使うんですか？」

「桜の呼吸よ」

「それで桜が舞うような動きだったんですね」

「おい、最後の一本寄こせ！」

「お前が食べすぎなんだろうが！」

後ろで善逸と伊之助が言い争い、Aは微笑んだ。

「Aさん。よかったら、桜の呼吸、見せてくれませんか？」

「・・・っ！」

炭治郎からの提案にはっとなる。

「・・・私は」

Aは側にある刀に触れた。

(ああ・・・)

目をつぶれば、何度も蘇ってくる。

(私にはできない、)

「Aさん？」

我に返ると、心配する炭治郎の顔があった。

「どうかしましたか？」

「・・・何でもないの」

Aは顔を曇らせ、空を見上げた。

澄み渡る鳥の声も、なぜか切なく感じた。