桜の花は、淡い恋色。２【鬼滅の刃】 (ページ44)

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桜花爛漫　　　　　其ノ捌拾壱ページ44

「はあ、はあ・・・」

Aの目の先には、赤子の姿となった無惨がいた。

地面に潜り込もうとする無惨を、隊士や隠が必死に食い止めようとしている。

「ふうーっ」

深く息を吐き、Aは目を閉じた。

ーー「見ておばあちゃん！」

幼いAは、木刀を持って祖母の前に立った。

「桜の呼吸・・・」

小さな身体で木刀を振る姿を、祖母は縁側から微笑んで見ていた。

壱ノ型、弐ノ型、参ノ型・・・。

漆ノ型まで続けて技を出したAは、よろよろとその場に座り込んだ。

「上手くなったねえ。A」

祖母が頭を撫でると、すぐに抱きつくA。

「実はね、桜の呼吸には捌ノ型まであるんだよ」

「捌ノ型？Aもやってみたい！」

静かに首を横に振る祖母。

ーー「いずれ分かる時が来るかもしれない。捌ノ型の意味も・・・」

「ようやく分かったわ。おばあちゃん」

私に捌ノ型を教えなかった理由。

「この技は、誰かを守るためにある。

　そして・・・」

Aが刀を振り上げると、桜の花びらが舞い落ちた。

「これが人生で最期の呼吸になるかもしれない」

突然吹き荒れた桜に、隊士が見守る。

「A・・・」

傷だらけの義勇もゆっくりと振り返った。

(身体への負担が大きすぎるから・・・命を落としてしまうかもしれない。だけど・・・！)

動かない足を引きずりながら、Aは無惨の前に立った。

(どうせ死ぬのなら、美しく散ってみせる)

「桜の呼吸、捌ノ型・・・」

頭上で龍が身体を巻き、嵐のように桜が吹雪く。

「くっ・・・」

重くなる刀を両手で支えながら、一瞬にして縦横に無惨を斬り裂いた。

「桜花爛漫」

その瞬間、無惨の中から日輪刀が飛び出す。

力を振り絞った、炭治郎の腕だった。

「アアア！！」

血溜まりの中で

日の出と共に滅びていく無惨の身体。

やがてそれは燃え尽きていき

跡形もなく消えてしまった。