桜の花は、淡い恋色。２【鬼滅の刃】 (ページ41)

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妹の幸せを　　　　其ノ漆拾捌ページ41

二人の間を駆け抜ける風。

顔を涙で濡らす妹は、最後に見たあの日と変わらなかった。

「いつから・・・気づいてたの・・・？」

「那田蜘蛛山で会った時から。

　一目で心夏だと分かったわ・・・」

力なく微笑むAの手を、心夏は握り締めた。

「お姉ちゃん！私、私・・・」

ごめんなさい、と言いかけた心夏の頭を撫でてあげた。

「謝らなくていいから。心夏が元気にしているなら、それでいい」

ドーン！

その時、近くで建物が崩れ落ちた。

心夏を庇いながら、Aは彼女の肩に手を添えた。

「ここは危ないわ。心夏は向こうへ行って」

「お姉ちゃんは・・・？」

「私はもう駄目。あなたまで巻き込みたくないの」

肩に置いた手は、やがて背中を押す手となった。

「心夏・・・自分で決めた道を歩んでね。

　そして・・・必ず幸せを掴むのよ」

「・・・うん」

頷くなり、次第に心夏の手は離れていった。

振り返れば、きっと駆け戻りたくなる。

「お姉ちゃん・・・」

不良たちから助けてくれた日。

初めて手紙を出してくれた日。

那田蜘蛛山で庇ってくれた日。

私を、もう一度妹にしてくれた日。

どれもこれも、浮かんでくるのは頼れる姉の顔。

今まで、助けてもらうばかりだった。

そして、今も・・・・・・。

「ありがとう・・・」

震える拳を握り締め、心夏は隠たちの元へ走った。