桜の花は、淡い恋色。２【鬼滅の刃】 (ページ40)

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生きて・・・　　　其ノ漆拾漆ページ40

ーー初めて出会った時は、なんて可哀想な子なんだろうと思った。

雪の中。親に捨てられた彼女の顔は青白く、

手足は氷のように冷たい。

あいつが鱗滝さんに、鬼殺隊になりたいと話した時

不安でたまらなかった。

こんな少女までもが戦わなければならないのかと。

そんな世の中、俺たちで終わらしてやると誓った。

錆兎・・・。お前にも見せてやりたかった。

二十歳となり、美しさを増したお前の想い人を。

お前たちなら、きっと良い恋仲・・・

いや、夫婦になっていただろうに。

でもな・・・。

あいつは強いよ。

もう、お前が知っている頼りないAじゃない。

「きっと驚くぜ・・・」

剣を振り続ける義勇の目から、一粒の涙が落ちる。

俺から見たAは、いつも桜が咲き誇ったようだった。

悲しいこと、辛いことがあっても、必ず後に花を咲かせる。

過去をいつまでも引きずる俺とは真反対だ。

Aがいなければ、俺は立ち直れなかったかもしれない。

だから・・・・・・。

「お前には、死んでほしくないんだよ・・・」

起き上がれない程身体中が痛い。

だが、さっき受けた傷も、だんだんと痛みを感じなくなってきた。

「ふぅ・・・」

呼吸で少しでも止血しようとした時、一人の隠がやって来た。

「A様・・・！」

「なつ・・・」

なつはAの横に座るなり、布を取り出した。

「今止血しますから」

慌てて布を持つ彼女の手を、そっと握って静止させる。

「私は放っといて・・・。他に怪我をしている隊士を助けてあげて」

「・・・」

「なつ、」

「嫌です・・・」

手を掴んだままうつむくなつに、優しく話しかけた。

「どうして私が心夏に会わないか、分かる？」

「え・・・？」

風で髪をなびかせたAに、なつは息を飲んだ。

「姉は、いつでも妹の幸せを願っているんだよ」

ーーその瞬間、隠の頭巾が風で飛ばされ・・・

髪を一つにまとめる赤い組紐をなびかせながら、涙をこぼすなつがいた。