桜の花は、淡い恋色。２【鬼滅の刃】 (ページ34)

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願いは同じ　　　　其ノ漆拾壱ページ34

「頼みたいこと・・・？」

「ああ、」

少年は歩き出し、Aも立ち上がる。

「俺は愈史郎。無惨に恨みを持つ鬼だ」

「鬼・・・？でも、あなたからは何の気配も・・・」

「無惨からの支配は逃れている」

「・・・そうなんだ」

前を向いた矢先、隣からただならぬ怒りの気配を感じた。

「えっと・・・大丈夫？」

「許さない・・・。俺の珠世様を・・・」

愈史郎は目を真っ赤にしていた。

「珠世様に指一本でも触れたら、ぶち殺してやるからな！！」

「ちょ、落ち着いて！」

次第に落ち着きを取り戻した愈史郎は、深いため息をついた。

「珠世様を見るのが何よりの生きがいだった…

　病の俺を生かして、月のような優しい光で見守ってくださった…」

「分かるよ。大切な人を奪われるのは、どれだけ哀しいか」

「毎日日記もつけていた。珠世様のお言葉、仕草、素敵な笑顔・・・。全てが俺の財産だ」

涙を浮かべて語りかける愈史郎から、一歩後退りした。

いや、分かる。好きな人はいつでも見ておきたいよね。

私だって、四六時中隣にいたいって思ったし。

それでも、そこまでする・・・？！

一歩間違えたら訴えられるよ・・・。

「お前にも教えてやるよ。どんなものよりも美しい珠世様の素晴らしさを」

「いや、ちょっと・・・」

休むことなく話を聞き続けていると、何かの音が聞こえ始めた。

「これは、琵琶の音・・・？」

「あそこだ」

愈史郎が指差した先には、黒髪の女が座って琵琶を弾いていた。

「あの女が全体を支配している。それを俺がぶち壊しにいく」

「なるほど。あの琵琶で・・・え？」

Aは愈史郎を見つめる。

「・・・本気？」

「俺が無惨を地上に叩き出す。隊士と共に」

愈史郎の目に迷いはなかった。

「お前には、あの女までの道を切り拓いてほしい。はっきりと言えば囮だ」

「・・・分かったわ。気を付けて」

愈史郎が合図を出した瞬間、刀を持って駆け出す。

琵琶女の血鬼術を斬り伏せ、愈史郎がその頭を押し潰した。

「今からお前を、地上へ叩き出してやる！！」

その刹那、激しく地面が揺れて・・・。

宙に浮かぶような感覚に、いつの間にか気を失っていたーー。