かけがえのない人 其ノ陸拾捌 ページ31
「包帯巻くまでの間、止血して！」
場所を移動したAは、怪我をした隊士の手当をしていた。
風の噂によれば、無惨は藤の花の薬で動けないらしい。
しかし、斬りかかった者は皆倒されていた。
(このままだと命を落とす隊士が増えてしまう・・・)
いつまでも変わらない状況に、不安を感じた時だった。
「胡蝶しのぶ死亡ー！上弦の弐との戦いにより死亡！！」
Aは動きを止めた。
今、なんて・・・？
「しのぶちゃんが、死んだ・・・？」
全身に鳥肌が立つ。
頭上を翔ぶしのぶの鴉・艶の姿を見た瞬間、とめどなく涙が溢れた。
「そんな・・・そんな・・・！」
鬼殺隊に入って数年間、自分の道を見つけられなかった。
そんな時、寄り添ってくれたのがしのぶちゃんだった。
彼女は鬼に親、姉を殺されたというのに、その気配りの上手さが、私の癒しになっていた。
短気なところ、毒舌なところ、そして、自分に厳しいところ。
全てが好きだった。
無理しすぎだよ・・・。
自分の身さえ犠牲にするなんて。
震える肩に、誰かの手が置かれた気がした。
とっさに振り返るが、誰もいない。
「Aさん」
目線の先に、しのぶが立っていた。
「しのぶちゃん・・・」
Aが目を潤ませる中、しのぶはそっと微笑んだ。
「Aさんなら、」
「え・・・？」
「私が成し遂げたかったこと、Aさんに託します」
「しのぶちゃん！」
「あなたに、会えて良かった・・・」
必死に手を伸ばしたが、それは光となって消え去った。
(命を懸けてつないでくれたもの・・・)
かつての言葉が脳裏に蘇る。
錆兎が義勇を殴り飛ばした時だった。
かけがえのない人を失くす悲しみは、
当時の私には分からなかった。
・・・今なら痛いほど分かるのに。
錆兎、しのぶちゃん、お館様・・・。
みんな、自分が成し遂げられなかったことを誰かに繋いで散っていったんだ。
Aは涙を拭いて立ち上がった。
「私、見回ってくるわ。怪我してたら無理しないで」
「分かりました！」
刀を腰に差し、静かに歩き出す。
「みんなが望んでいたこと。それは・・・」
ーー鬼を滅して、涙を流す人のいない世をつくること。
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レベ - 錆兎のお話見るたびに泣いてしまう…（感動の涙です。） (2022年11月16日 15時) (
レス) @page5 id: ea3111d08d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：組紐屋の夜桜 | 作成日時：2022年4月11日 22時
