突然の出来事 其ノ陸拾弐 ページ25
蝶屋敷を後にし・・・。
(みんな、誰かのために命を懸けてる・・・)
日はすっかり落ち、Aは何もない道を歩いていた。
(もし私だったら、誰に命を懸けるんだろう)
と、前から傷だらけの男が歩いてきた。
「あ、こんばんは」
「・・・おう」
風柱、不死川実弥。
隊士からは怖がられているけど、
私からしたら、優しくていい人だと思う。
不死川さんにも弟がいたから、兄弟のことで話が合う。
噂では、義勇と仲が悪いとか・・・。
「傷・・・。また増えました？」
「そうか？」
そう何個か言葉を交わし、Aは通り過ぎようとした。
「冨岡とは、親しい仲らしいな」
実弥にAは振り向いた。
「そうですけど・・・。昔から一緒に育ってきたんです」
「どんな奴だった・・・？」
「そうだな・・・」
と、星が出始めた空を見上げる。
「今の義勇からは想像つかないかもしれないけど、昔は臆病でした。鬼一匹だって倒せない。
でも、仲間が彼を強くしたんだと思います。ぶっきらぼうだけど、本当は柱の皆さんにも感謝していますよ」
「そうか、」
何事もなかったように、実弥は去ろうとした。
「分かり合えますよ。不死川さんなら」
不意に足をとめる実弥。
「どういう意味だ」
「義勇も鬼に姉を殺されたんです。だから、何かを失うことの悲しさは、誰よりも分かると思う」
Aは実弥に微笑みかけた。
「それに、義勇だって同じこと聞いてきましたよ。
不死川さんの好きな食べ物とか」
「なっ・・・！お前っ」
少し顔を赤らめた実弥に、大笑いした。
その時・・・。
ドーン！！
「え、何？」
「伏せろ！」
実弥に腕を引かれ、地面にしゃがみ込んだ。
肩越しに見えたのは、空に昇る火柱だった。
「あ、あそこは・・・」
「お館様の屋敷！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 31人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レベ - 錆兎のお話見るたびに泣いてしまう…（感動の涙です。） (2022年11月16日 15時) (
レス) @page5 id: ea3111d08d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：組紐屋の夜桜 | 作成日時：2022年4月11日 22時
