桜の花は、淡い恋色。２【鬼滅の刃】 (ページ16)

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お前へ　　　　　　其ノ伍拾肆ページ16

ー義勇目線ー

「へえー。炭治郎くんが？」

「ああ。気付いたら後ろにいるんだ」

俺の隣で歩くAはくすくすと笑った。

最近、俺は炭治郎に付きまとわれている。

多分、俺が孤立していることを気にしているのだろう。
　
今日も上手く撒いて来た。

「素直でいい子だからね。聞いてあげたら？」

「・・・そうしようと思う」

そんな他愛のない話をしていると、

分かれ道に着いた。

「じゃあ、気を付けろよ」

「うん。今日はありがとう」

そう交わして手を振ると、Aは背を向けた。

・・・Aには申し訳ないことをしたと思う。

幼い頃から側にいた俺が、気遣ってあげられなかった。

でも・・・。

Aのおかげで、今までの暗い霞が

少しは晴れたような気がした。

星が灯る道を歩きながら、義勇は空を見上げた。

(せっかく炭治郎が気にかけてくれているのだ。

　その思いを、無駄にはしたくない)

右頬を押さえると、ずきずきと痛む。

(それにしても、派手にやったな・・・)

明日に向かって覚悟を決め、義勇はまた道を歩き出した。

「義勇さーん！」

朝の散歩中、名前を呼ばれて振り返った。

(懲りねえな・・・)

炭治郎が走って来て、義勇は橋の真ん中で立ち止まった。

「炭治郎・・・」

背を向けたままつぶやいた。