色恋戦線 2nd【ars K.N】 (ページ36)

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その内、Aが風呂から出て来てベッドの淵に座った。

うわー、すっげぇ石鹸の匂い。
わざとか？わざとなのか？
んなワケ無いか。
そういうタイプじゃない。

Aはホテル備付けの白い大きめのパジャマを着て、バスタオルで髪を拭いてる。

「何読んでたの？」
「んー？加藤くんの本、出たんだね」
「あ...」
「知らなかったとは言わせないよ？」

んー？とAの顔を覗き込んだら、ちょっと気まずそう。

「別に加藤くんの話されても、嫉妬とかしないよ？」
「でも...」
「それとも加藤くんと何かあるの？」
「無い」

Aの首に腕を引っ掛けてグイッと下に引いて、彼女もベッドに腹這いにさせる。

「花嵐堂にも加藤くんの本、並べてあんの？」
「うん...」
「ねぇ、Aがモジモジしてると本当に加藤くんと何かあるみたいだからもっと普通にしなさい」
「えっ！？あっ、はい！」

まるで、先生に怒られた生徒みたい。
可笑しくて、クスッと笑う。

「で？売れ行きはどう？」
「小山さんが張り切ってたくさん入荷して、でも加藤さんは凄く不安がってて...」
「うん」
「だけど、小山さんがそこは勿論ポップに作者は当店のスタッフ！とか書いて、サイン会なんかも企画して！」

普通にしろって言った途端に、突然元気になった。
ホント、Aらしい。

「すっごく売れてる！加藤さん、絶対に売れっ子になるよね！」
「アハッ！それは分かんないけど、まぁ良かったね」
「うん、良かった」

Aがアハーって、力の抜けた笑い方をしてベッドにペタンと頬をつけた。

オレもペタンとベッドに頬をつけて、Aと顔を合わせる。
あー、これ見つめ合うって状態？

Aが照れ臭そうに、口元をムズムズ動かした。

「オレも印税生活したいなー…」
「すだちでデビューしたら良いのに」
「大野さんが仕事辞められないもん」
「和也くんは辞められるの？」
「メジャーデビューが待ってるなら『元教師』って肩書きを存分に使わせて貰うよ」

絶対にありえない話で、ケラケラ笑い合う。

「さーてと！オレも風呂入って来ようかな」
「うん、行ってらっしゃい」
「眠たかったら寝てて良いから」
「寝ないよ」
「そ？」

よいしょ、と身体を起こしてAの背中をポンと軽く叩く。

「じゃ、イイコで起きてて下さい」

ポンポン。

ベッドから下りて、オレはお風呂セットなんか無いから下着だけ持ってバスルームに向かった。