色恋戦線 2nd【ars K.N】 (ページ20)

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一週間、もう『考えない』という事をやめた。

ずっと考えてた。
自分がどうしたいのか。
後悔しない方法って、どれが一番最適なのか。

だからこれまで以上に、仕事中上の空になってる事が増えてたらしい。
生徒から笑われるようなミスをして、さすがにこれじゃダメだと仕事中は考えないようにした...けど結局それってやっぱり考えてるって事だった。

その週の日曜は、朝からずっと考えていて

もう答えなんて出てるのに、なかなか踏み出せなくて夕方も過ぎてしまって

何故だかオレは、電話を掛けていた。

「はい、もしもし？」

電話をとった相手は、フラットな声で応える。

「今、大丈夫？」
「もう夜の部が始まるから忙しいんだけど」

大野さんの声の後ろに、ザワザワとたくさんの声が聴こえる。

「ごめん、じゃあ手短に」
「うん」
「『ガンバレ』って言ってくんない？」
「は？」
「早く」

はぁ？と大野さんが笑うから、何か恥ずかしくなって咳払い。

「ガンバレ」
「...ありがと、じゃ...」

電話を切ろうとしたら「大丈夫だよ」と、聴こえてもう一度スマホを耳に当てる。

「ニノなら大丈夫だよ。頑張れ。屍は拾ってやる」
「...死ぬつもりは無いんだけど」
「フフ、頑張れ」

オレが何か言うより前に、電話は切れた。

誰かに応援して欲しいなんて、超格好悪いって思うけど

そうでもしなきゃ、意地っ張りなオレの脚は動いてくれそうになかった。

「...行こ」

立ち上がる。

車のキーを手に取って、家を出る。

誰も居ないばーちゃんちに車を停めて、AKUTAGAWAとは違う店へと向かう。

心臓がバクバクして来て、柄じゃないでしょと自分に言い聞かせた。

久し振りの花嵐堂の扉を開けると、コーヒーの香り。
不思議なものでAKUTAGAWAだってコーヒーの香りはしてたのに、懐かしいと感じた。

視線だけを動かして、キミの姿を探す。

本屋には居ない。
カフェカウンターにも、居ない。

...休み？...もう帰った？

そこに店長さんが来たから、思わず呼び止める。

「あの、今日って結城は休みですか？」
「あぁ！Aちゃん、今日は急用があったらしくて」
「...急用...」

そっか...。
まぁ、そうだよな。
オレだけの都合で動いてところで、会えるかどうかなんて半々だ。

仕方無い。
出直そう。

そう思って店を出ようとしたら、軍手をして段ボールを抱えてた加藤くんと目が合った。