色恋戦線 2nd【ars K.N】 (ページ15)

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ザァッ...と風が、大きな木を揺らした。

「オレは、お前みたいに我慢強くない」
「...私は我慢強くなんか...」
「だからって、今のお前みたいにもなれない」
「今のって...？」
「我慢してない状態だよ」

もうこんなの、告白と同じだよな...と思ったけど、もう言ってしまった事は取り消せない。

「先生...どうゆーコト...？」
「さぁ。どうゆーコトなんだろうね」

自分でも分かんなくなって来たんだから、答えられるはずが無い。
そう思ったら、ちょっと笑えた。

「問題です」

キミが突然言った。
「は？」と、気の抜けた声が出た。

「先生の言葉の意味を、分かりやすく説明しなさい」
「フハッ！何だよ、それ。......やだよ」
「...ズルいです」
「ズルくて結構。オトナはズルい生き物なんだよ」
「先生...、そんなに私と会いたくなかったんですか...？」
「うん。そう言ってるでしょ？」
「......」
「何度も同じコト言わせんなって。お前だって聞きたくないでしょ」

みるみる、悲しそうに口角が下がって行く。

「ごめんね。オレ今、結構しんどい」

しんどいのはきっと、キミに無理やり嫌われようとしてるこの現状。
わざと傷つけるような事を、ぶつけてしまってる現状。

だから、早くオレを嫌いになって。

もうこんな面倒臭い人、どうでも良いやって思って。

そうだ、近くに年相応の格好良い男の子が居たじゃん！って、思い出して。

「...じゃあ、ひとつだけお願いを聞いて貰えませんか...？」

キミが、予想もしてなかった言葉を落とした。

「叶えられるかは分かんないけど。何？」
「先生の本棚が見たい」
「本棚...？」

それもまた、予想してなかった願いで真意も分からないし何も言えない。
まぁそれ位なら...って気持ちもあった。
でも、本棚って事は家に入れないといけない。

そんな事をしたら、もう自分を抑えるなんてどう考えたって無理だ。
教師だって、悲しいけど単なるオトコだ。

「ごめん」

そう答えるしか出来ないオレに、キミは「...ですよね」と悲しく笑った。

「...変な事言ってすみませんでした」
「ごめんな」

オレが謝ると、キミが小さく首を振ってから口を開いた。

「先生」
「ん？」
「最後に、これだけは答えて貰えませんか...？」
「......」

キミが、オレに一歩近付く。
寒いからなのか、鼻が真っ赤だ。

「私と居ると、何を『制御できない』んですか？」

それ...訊くのかよ...

「本当に残酷だね」

ガラリと、心の一部が崩れた。