色恋戦線【ars K.N】 (ページ24)

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オレの毎日は変わらなくて、日曜日には花嵐堂へ行く。

キミとは顔を合わす度に、色んな話をしたりフザけ合ってみたり。

すっげぇ甘いイチゴミルクを美味しそうに飲んでるのなんかを見ると、やっぱガキンチョだなって思うけど

オレの隣に座って本を読んでる横顔は、すっげぇ大人っぽくなってるし...なんてちょっと戸惑ったり。

だけど、戸惑ってる自分にも戸惑う。
何に戸惑ってんのよ。何に...まさか...

「いやいや...違うわ」

自嘲しながら入った花嵐堂は、いつもとは比べもんにならない位に混んでいてその客の大半が浴衣を着てる事で、今日が花火大会だと思い出す。

カフェカウンターの中のキミは忙しいだろうに、笑顔を崩さない。
オレには絶対出来ない仕事だわ...と思いながら、行列に並ぶ。

順番的にオレはキミじゃなくって、あの看板店員青年(名札には『シゲ』って書いてあるけど、加藤くん)に注文する事になったんだけどキミはオレをチラっと見てニコっと笑った。

少しだけ、運試しのような事をしてたんだと思う。

カウンターに居る店員の誰に注文を言う事になるかは、自分の順番になるまで分からない。

オレはきっと「結城だったら良いなぁ...」って思ってたんだ。
ガキみたいに。

だから加藤くんに「ご注文どーぞー！」って爽やかに言われた時、申し訳無いけど正直「お前かい！」って思ったのよ。
ホンット、申し訳無いけど。

でも同時にガッカリしてた自分に、やっぱり戸惑った。こんな些細な事で。

でも、認める訳にはいかなかった。
認めてしまったら、こーゆーのって後は転げ落ちるだけって分かってんの。

なのに、キミはオレにトドメを刺して来たんだ。
きっと自覚なんて無いだろうけど。

仕事を終えたキミはいつものようにオレの所に「お疲れ様です」と挨拶しに来た。

まだ忙しそうな店内を見て申し訳無さそうにしてるキミに「早く帰ったら良いんだよ、こーゆー時は」と言って、自分も立ち上がる。

「オレもそろそろ行こうかな」

結構長い時間本を読んでたせいか、何だか頭がボォっとして欠伸が出た。

そしたらキミも同じようにフワァ...と欠伸。

「ンフフ、真似すんなや」
「真似って訳じゃ無くて、伝染したって言うか...」
「伝染、しちゃってんの？」
「はい。...え？何ですか？」

キョトンとしたその顔を見て、勘弁してよって思った。

『欠伸がうつるのは脳が同調しようとしてるから』なんて話を思い出してしまって

ほら。もう転がり出した。