色恋戦線【ars K.N】 (ページ17)

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週明けから登校してきた結城は、元気に笑ってるように見えた。

友達と喋って、大笑いして

オレを避ける訳でも無く、これまでと同じように質問や雑談をして来た。

それに対してオレも普通に接してたけど、雑用を頼む事は出来なくなった。
だからって、これまで結城に頼んでた事を他の奴に頼むのはどうなんだ...と思うと誰にも頼めなくて、結局自分一人で大量のプリントを職員室まで運ぶ事も。

「生徒に助けて貰えば良いのにー」

ヨロヨロ歩いてると、廊下で出会った大野さんに言われたりして。

「うるさいな。大野さんみたいに人気者じゃないから誰も手伝ってくんないのー」
「良い秘書が出来たって言ってたじゃん」
「...契約期間終了かな」
「あはっ、何それ」

笑った彼に半分持たせて...違うな、3分の2は持たせた。

季節は受験シーズンになり、オレの胃も毎日キリキリした。
これでも教師だ。

学校側の進学率なんてどうでも良いんだけど、生徒の達成感たっぷりの笑顔が見たい。

それぞれの合格発表が始まると、良い報告も、そうじゃない報告も受けた。
喜ぶ笑顔も、落ち込む涙も、全部オレに見せたら良いよと思う。

そんな中、そのどちらでも無い生徒。

笑うでも、泣くでも無く、無表情で廊下の端の壁に凭れ、全然こっちに来ない。

他の生徒達が居なくなってからそっちをチラっと見れば、ゆっくりと瞬きをした。

「そんなトコで何してんのよ」
「...待ってたんです」
「ンフフ、何それ」

結城に近付くと、彼女は小さく息を吐き出した。

「さて。結城さんの結果はどうでしたか？」
「......」
「...ん？」

唇を噛み、何も言わずオレを見上げる。

「おい...結城...？」

何となく、結城は大丈夫だと思ってた。
成績も上がってた。充分、東山大に行ける力はつけてたのに

まさか...

考えたくない事が浮かんだ瞬間

「...大丈夫でした」
「え？」
「合格...です」
「マジかっ！？何だよ、もうビビらせんなや！」

オレはこの数秒でかなり緊張してたらしく、安心して大笑いしてしまって結城もクスリと笑った。

「別にビビらせた訳じゃ無いです。先生が勝手にビビってただけですから」
「ビビらせようとしてたろーが。意地悪いなぁ、お前」
「......」
「あーでも、良かったわ。頑張ったな！」

つい、さっきまで他の生徒にもしてたせいで

思わず彼女の頭を撫でようと、手を上げてしまい

ダメだ...と行き場を無くしたその手は、不自然に宙で揺れた。