色恋戦線【ars K.N】 (ページ14)

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生徒からの告白なんて、若い教師は恒例行事のように受ける物で。
そんなのは恋に恋してるだけだと、その度に諭していた。

泣いてしまう生徒も居たけど、きっとすぐに忘れて大学生になれば同世代の中にイイオトコを見付けられるモンなんだ。

それでもやっぱり、生徒からの「好きだ」という想いを否定するのは気持ちの良いものでは無かったから出来るだけ恋愛感情を持たれないようにと気を付けていたはずだった。

気が緩んでいたとしか、言いようが無い。

迂闊だった。

どこかに雷が落ちて、学校が停電したあの放課後。

いつもどっちかと言えばシッカリしてる彼女が、雷にビクビクしてる姿が純粋に可愛いなと思った。

この『可愛い』は、子供を見て思うそれと同じで

もちろん、やましい気持ちなんか無くてただただ「安心させてやろう」と思っての行動だった。

ギュウっと小さくなってる彼女の頭を抱き寄せて、ポンポンと撫でてやる。

そのまま、落ち着かせるように背中もポンポンと撫でて。

雷の音が怖いんだろうと、窓の外が光る度に彼女の耳を塞いでやった。

オレもガキの頃に親父にこうして貰って、安心してたから。
でもそんな話をしても、彼女は何故かいつものようには笑わなくて。

ソファから立ち上がったオレの手首を、冷たい手が掴んだ時

あぁ...オレはラインを超えてしまったのかもしれない...と

一瞬の内に、自分の行動を悔やんだ。

「先生の事が...好き...」

薄暗い部屋の中、彼女の目から涙がボロボロッと零れ落ちた。

今からオレは、彼女を傷付けてしまうんだ...。
とんでも無く酷い言葉を吐くんだ...。

「...せんせ...」
「雨」
「...…え...」
「雨の音、小さくなったな」

告白と全く関係の無い事を言ったオレの顔を、信じられないという風な表情で彼女は見上げた。

オレの手首を掴んでいた彼女の手を離して、オレは距離をとる。

きっと、勘違いなんかじゃない。

分かってる。
キミは、きっとそうじゃない。

恋に恋をするというタイプでも無いだろう。

だからこそ、オレを好きになってはいけない。

「オレは、オレを『先生』と呼ぶ奴と、恋愛する気は無い」

その涙は止める方法を忘れたかのように、流れ続ける。

「私の気持ちは苦しい程、本気でした。...失礼します、さようなら」

部屋から出て行く後ろ姿を見て胸が傷んだ。
教師失格だ...。

その時、苛立ちに任せて殴ってしまった壁はべっこりと凹んでしまい、教頭に平謝りしたっけ。