検索窓
今日:7 hit、昨日:6 hit、合計:103,366 hit

第五十五話「レッテル」 ページ6

「そういえば」




めちゃくちゃ美味しい咖喱を堪能していると森がふと思い出したように声を上げる。




「あの後、どうなったか太宰君に聞いたかい」



『……私が撃たれた後ですか』



「僕は云ってないよ」




太宰は蟹炒飯を頬張りながら森を見る。

何かアイコンタクトをしているように見えたが……




「実は君達、一度海に落ちてね」



『え?海に?』



「うわ、何で云うの」




太宰は心底嫌そうに森を睨む。

森は太宰の表情を見て笑った。




「君が撃たれてすぐ特務課の者が威嚇で太宰君の足元を撃った。
そして太宰君はバランスを崩して海にドボン」



『え、太宰さん!足は?』



「掠っただけ。でも真逆、本当に撃ってくるとは思わなかったから驚いたよ」




その時、種田も驚いていたらしい。

部下にも撃つなと云っていたのだろう。

もしかしたら太宰よりか驚いていたのかもしれない。




その後、太宰は私を抱え、ひっそりと岸に上がってマフィアが二人を回収。


ずぶ濡れの私を紅葉が着替えとか諸々やってくれたらしい。




『……紅葉さん……申し訳ない』




私の事、許していないのにこんなにも良くしてもらって……

何か贈り物したいな。

あ、でも私からじゃ受け取らないよね?

だったら森から渡してもらうしか……




「紅葉さんの好きな物……知りたい?」



『……うん、知りたい!』




心の声を読まれていたらしい。

太宰はニコリと笑って「じゃあ」と言葉を繋げる。




「今夜こそ、僕と」



「紅葉君は可愛いものが好きだよ」




太宰の声を遮って森がにこやかに答えを云った。


太宰はこれでもかって程に嫌な顔をした。

余計な事を云いやがったなこの野郎と云わんばかりの顔だ。




『……可愛いもの』




慥かに鏡花への可愛がりは尋常じゃなかった気がする。

まぁしょうがない、鏡花だもん。

あの子は可愛いもん。兎みたいで可愛いもん。



……この子だって見た目は可愛いけど。



紅葉さんには“悪女”だと思われているからそこから“可愛い”に昇格はしないだろう。




『……首領』



「何だい」



『フリフリの可愛らしい私サイズのドレスありますか!?』



「え!?あっ、君が……え?ん?」




森が目を丸くして驚く。

太宰に関してはお茶を吹き出していた。




『悪女というレッテルを無くして姐さんには可愛らしい部下として接してもらいたいから!』




太宰と森は目を点にして私を見つめていた。


.

第五十六話「求めていた」→←第五十四話「作戦は成功」



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (338 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
678人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン
感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:らしろ | 作成日時:2020年8月10日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。