第五十四話「作戦は成功」 ページ5
｢体調はどう？｣
太宰は私の頭を撫でながら心配そうに見つめる｡
うん､心臓に悪いね｡
『大丈夫､ありがとう』
｢……ごめん｣
いきなり太宰が呟いた｡
謝られると思ってなかった私は驚く｡
『何で謝るの』
｢君の目が恐怖に染っていた｡もっと早くに終わらせるべきだった｣
やはり気づいていたんだ｡
慥かに早く終われと思ったけども……
『いいの､結果的に作戦は成功｡喜んでいいんだよ』
私は安心させるように笑う｡
それでも駄目だったのか太宰はしゅんと落ち込む｡
『あー､じゃあ何か美味しいものを奢ってよ』
｢美味しいもの……美味しいものって云ったら君の手料理しかない｣
『うーん､嬉しいけど……そうかァ』
でも今日は何もしたくない気分｡
外食で済ませたい気分なのだ｡
『……咖喱』
｢咖喱？｣
『咖喱が食べたい』
そう云うと太宰は携帯を取り出して誰かに電話を掛けた｡
｢もしもし､咖喱食べたいから美味しい咖喱の店を予約して
………………え？うん､目が覚めたよ｣
話の内容を聞くと咖喱の店に電話したんじゃない｡
咖喱の店を予約するように誰かに電話したんだ｡
一体誰に電話したんだろう？
｢よし､じゃあ行こうか｡立てる？｣
『う､うん……ありがとう』
手を差し伸べてきた太宰に､紳士だ！と思いながら手をとる｡
『あ､もしもの為に変装したほうがいいよね』
｢じゃあウィッグだけ被ればいいよ｣
はい､と渡されたのは綺麗な黒髪の長髪ウィッグ｡
いつの間に購ったのかと驚きながら受け取り､付けた｡
｢うん､全然印象が違う｣
鏡を見てると太宰が後ろから覗き込む｡
『黒髪の長髪もいいね､結構好きかも』
｢……うん､僕も好き｣
『本当？嬉しい』
そう云って振り返って喜ぶと太宰はキョトンとして微笑んだ｡
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シャンデリアが輝き､お洒落なBGMが流れる店内｡
その店は個室があり､のびのびと話がしやすい場所だった｡
｢……だからって森さんは呼んでない｣
｢たまにはいいだろう？ねぇ､舞姫ちゃん｣
『え､あ､は……はい､そうですね』
不機嫌な太宰に苦笑いの私｡
そして凄く嬉しそうな森の三人でお洒落で高級そうな洋食店に来ていた｡
｢森さんに頼むんじゃなかった｣
『あ､森さんに予約するように云ったんだ』
今更後悔しても遅い太宰だった｡
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作者名：らしろ | 作成日時：2020年8月10日 1時
