第五十一話「決行日」 ページ2
━━━━
━━
━
『だ､だだだっ太宰さん』
｢相当､緊張してるね｣
私の顔は青ざめ､体は細かく震えていた｡
あの日からもう三日経った｡
つまりは作戦の決行日でもある｡
｢うーん､深呼吸してみたらどう？｣
『しっしんこ､深呼きゅ……すぅすぅすぅぅぅ』
｢吸いすぎ､吐いて｣
『は､はわわわわわわわわわわわ』
｢ねぇ､本当に大丈夫？｣
大丈夫な訳あるか｡
私の人生が掛かってるんだぞ？
｢大丈夫､僕がいるから｡
君は安心して演技に集中すればいい｣
『うぅ､でも』
｢そんなに僕が信用出来ないの？｣
『否､真逆｡太宰さんのことは誰よりも信用してるよ』
太宰はポカンとした顔だったが嬉しそうにニンマリと笑った｡
｢任せてよ､絶対に君を傷付けない｣
『……否､バレるバレないの事を心配してるんだけど』
怪我は多少してもしょうがないと思ってる｡
けれど太宰が私のために怪我はして欲しくない｡
『太宰さん､何かあったら作戦は放棄して逃げ』
｢何云ってるの？｣
彼の声が低くなって私は言葉を切る｡
あ､怒った｡
明らかに先程と纏う空気が違う｡
｢僕は絶対に君を置いてなんか行かない｡
もし仮に作戦が失敗しても僕は君を連れて逃げるから｣
安心させるように私の頭を撫でる太宰の手は酷く優しい｡
嬉しいような申し訳ないような思いで私はゆっくりと頷く｡
車は目的地に近付いていた｡
━━━━━━━
━━━━
━
｢手首､痛くない？｣
『……うん､大丈夫だよ』
手枷を太宰に嵌めてもらって目隠しもされる｡
太宰はボソッと｢こういうプレイもいいかも｣とかボヤいていたから思いっきり肘でド突いてやった｡
｢はい､これも飲んで｣
『えっちょ……ん！？』
変な薬を飲まされた｡
滅茶苦茶怖いんだけど？
｢さぁ行こうか……裏切り者さん｣
太宰が私の耳元で囁く｡
あぁ､もう演技は始まっているのだ｡
私はキュッと唇を閉じてゆっくりと歩き出す｡
場所は西の港｡
そこの少し小さめのコンテナの上で特務課の人達を待つ｡
後ろは海｡
何かあれば飛び込んで逃げられるように少し離れた岸にはひっそりとマフィアが待機していた｡
｢……うん､時間ピッタリ｣
キィッとブレーキ音が聞こえた｡
複数の足音が聞こえ､程なくして止まった｡
｢ようこそ､裏切り者の処刑場へ｡歓迎するよ､異能特務課の皆さん｣
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 678人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らしろ | 作成日時：2020年8月10日 1時
