第八話「匿ってください」 ページ8
「簡単に云うと不死身だ」
『不死身……』
死んでもまた生き返る。
化け物じゃないか。
「君の息の根が止まった瞬間に発動する異能だね」
『……だから爆発に巻き込まれても死ななかった?』
でも私がここに運ばれてきた時には怪我してたよね?
だから森さんが包帯を巻いたんだ。
それなのに……
「多分、爆発の時に死んだのではなく。ここに運ばれて数時間後に息を引き取った」
『あ、成る程』
という事は私は人知れず一度、死んだのか。
でもそれが“本当の私”がトラックに轢かれたのと
関係があるのだろうか?
「舞姫君」
『は、はい』
急に真剣な顔付きになった森に私は姿勢を正す。
何かを企むような怪しい目をしていた。
「私の元で働いてみないかい?」
『……森さんの所で、ですか』
「記憶が無い今、とても不安だろう。それに若し、君の異能が首領に知られれば……」
『し、知られれば……?』
ゴクリと唾を飲み込み森の次の言葉を待つ。
そんな彼は先程とは打って変わって爽やかな笑みで答えた。
「戦場に駆り出されるね。しかも第一線で」
『お願いします、森さん。私を匿ってください』
瞬時に土下座をする。
嫌だ、戦場になんか行きたくない。
普通に過ごしていたい。
……マフィアにいる時点で“普通”もクソもないが。
「ほらほら頭を上げなさい」
『……あ、あの……でも』
「安心しなさい。君の異能は必ず隠し通すから」
『あ、ありがとうございます』
相変わらず意味深な笑みを浮かべる森だが、もう彼に頼るしかない。
「他になにか気づいた事は無かったかい、太宰君」
森は視線を太宰の方へ向ける。
当の本人は変な液体をぐるぐるとかき混ぜていた。
「……太宰君、何してるの?」
「自 殺する為の薬作り」
「止めなさい」
森が素早く液体の入ったビーカーを奪い取った。
それに太宰は不機嫌になる。
「それで、気になった事はあったかい?」
「……左胸の数字」
「数字?」
『……見たんですか!?』
二人に背を向けてチラリと覗く。
“四七”
『……あれ』
今朝は“四八”だったのに一つ減ってる。
抑々これ一体何の数字なんだ?
「舞姫君?大丈夫かい」
『あ、はい……』
鬼魅の悪い正体不明の数字に私の顔は歪む。
これは云った方がいいのだろうか?
悶々と考えていると太宰が動き出した。
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作者名:らしろ | 作成日時:2020年7月20日 0時