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××BLOOD×× ページ50

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辺り一面が真っ赤に染った。





私はゆっくりと目を閉じる。





左胸の数字が増えていく。





けれど何も感じない。





罪悪感も





消失感も





恐怖も





迷いも





何も感じない。





人を殺しても





任務を成功させても





達成感なども感じなかった。






────なのに









「御苦労様です、森医師」





何故か“森”というワードに反応して声のする方へと視線を向ける。



最初に目に入ったのは白衣。


そして……




「あ……ぁ……」




母からよく見せられた写真の中の男が居た。


間違いない。



森……森鴎外。



私の……父親だ。





……でも何で此処に?


否、今はそんなことどうでもいい。



折角……逢うことが出来たのだ。


だったら……私は……もう一度……





「おや、A君」





広津の声に我に返る。


軽く挨拶をすれば彼は目を細めた。




「森医師が気になるのかね」




「……首領の専属医師(コンシェルジュ)ですよね」




「そうだとも、腕も慥かだよ」





そうか、父は立派な医者なんだ。


そういえば母もそう云っていた気がする。





「挨拶をしてきたらどうだね」




「……いえ、またにします」





嘘だ。


本当ならば駆け寄って、自分は娘だと公言して抱き着きたい。





また私は……愛されたい。





母と過ごしたあの頃のように平凡で小さな倖せで満足出来るような時間を過ごしたい。





けれど……もし彼に拒絶されたら?


自分は娘などいない、なんて云われたら?


そんな嫌な想像ばかりしてしまう。



だから、彼から話し掛けてくるまで私は気長に待とう。







私は広津に頭を下げてその場から離れる。





この行動が、この意思が後に私を絶望のドン底に突き落とされることとは知らない。









────森鴎外はそんな少女の後ろ姿をじっと見詰めていたのだった。








END.

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作者名:らしろ | 作成日時:2020年7月20日 0時

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