第四十話「超絶美少年」 ページ40
森は私が男装することに賛成した。
「太宰君と兄弟という設定?」
「何かと便利でしょ」
『え?便利なんですか』
「……成る程、いいよ。そうしよう」
え!と驚く私を見て森はニッコリと笑った。
森が許可するという事は何かしら利益がある筈。
『……判りました。けれど理由を教えて下さい』
「そりゃあ勿論、君の為だ」
森は私の頭を撫でながら云う。
私(男装)と太宰が兄弟という間柄ならば太宰がずっと一緒に居たり、気に掛けても「兄弟だから」と一言云えば丸く収まる。
それに政府も真逆、太宰の弟が私だと思いもしないだろうという。
『……そういう事ですか』
「何か困った事があれば太宰君に相談はしやすい。
勿論、私にもたくさん頼っていいからね。というかたくさん構ってね」
最後の一言は完全に私情だが、まぁいいだろう。
私は渋々頷いた。
「じゃあ早速購い物に行こう!」
「おや?太宰君、演技の練習は終わったのかい」
「何のこと〜?」
太宰は私の手を引いて部屋を出る。
自由気ままな彼に私はまた溜息を吐いた。
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「……うん、いいんじゃない?」
鏡の前に立っている美少年。
髪は太宰と同じ鷲色の蓬髪
鷲色のカラコンをつけ
胸元にはさらしを巻き付け
服装は黒のスーツに紺色の外套
そして念の為、眼鏡を掛ける
私は思わずマジマジと見てしまう。
超絶美少女なのだから男の格好をしたら可愛らしい超絶美少年となった。
『ほんとこの子、顔いい……』
「はいはい、自分の顔に見惚れてないで次行くよ」
『ちょっ、もう時間も遅いし帰りますよ』
「駄目、あと一つ」
店を出て車に乗り込んで何処かへと向かう。
ウィッグもカラコンも服も靴も全て揃えた。
一体あと何を購うつもりなの?
『あと何を購うんですか』
「敬語を外して」
『……あと何を購うの』
「内緒」
思わず舌打ちをしたのは許して欲しい。
それから喋ること無く互いに視線を外に向ける。
相変わらずこの街は素敵だ。
“魔都”なんて呼ばれているが私はこの街が好きだ。
もっと観光をしたいものだ。
『……あ』
信号待ちをしている時に(此方が一方的に)見知った顔を見つけた。
思わず凝視する。
「如何したの?」
太宰が不思議そうに聞く。
『……ううん、流石はヨコハマだなぁって』
和服の男と名探偵を見ながらそう答えた。
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作者名:らしろ | 作成日時:2020年7月20日 0時