検索窓
今日:2 hit、昨日:32 hit、合計:281,633 hit

第三十七話「ちょうだい」 ページ37

「これを……こうして……」




太宰は後ろを向いて義手を填める。

しかしどうやってそれを填めるというのか……




「ほら完璧」



『え、凄い……本物の手みたい』




どうやったか判らないが太宰は義手を填めて動かす。


これには森も私も驚く。




「……それじゃあ太宰君、お願いしてもいいかな」



「勿論だよ。でも森さん、一つお願いがあるんだけど」



「……自 殺できる薬品作りかね?」



「ううん、違う。この作戦が成功したら……」




太宰は私の肩を引き寄せ云った。




「この子を僕にちょうだい」



「駄目だ」




即答。


森はニッコリと笑いながら瞬時に答えた。


太宰も負けじとニコリと笑う。




「僕の協力あってこの子が助かるんだよ。このくらいいでしょ」



「ならば他の手を考えるしかないね」



「他の手って?何かいい案でもあるの?」



「今から考えるよ」



「今からなんて遅いよ森さん。これは一刻を争うのだから」




森と太宰の間に火花が散った。

お願いだからここで喧嘩なんて止めてくれ!




『……えっとあの』



「それにもう何を云ったって無駄だよ」



「何が無駄なのかね」



「昨夜、異能特務課にとあるメールを送ったから」




とあるメール?

どんなメール送ったんだ?




「……太宰君、内容はなんて送ったんだい」



「なんだったかなぁ。
……異能特務課のスパイである舞姫が情報を吐かない為
三日後にマフィアが彼女を殺すって書いた気がする」




しんっと静まる部屋。

森はあちゃーという顔で上を見上げた。


私に至っては放心状態。


……私も昨夜、メール送っちゃったんですけど。


呑気に体調が悪かったというメールを送ったんだぞ?




「大丈夫、きっと上手くやれる」



『やれないから!無理ですって!何勝手にメール送っちゃってるんですか!?』



「心配無用だよ、僕が君を守るから」




太宰の余裕そうな態度に私も森も溜息を吐いた。

すると森がふと何かに気付く。




「太宰君、三日後って早すぎやしないかい?」




森の言葉に私は全力で首を縦に振る。


心の準備は三日後までにしておかなくちゃいけないの?


私が上手く演技ができる筈がない!



しかしメールを取り消そうにも遅過ぎる。


きっと異能特務課はバタバタと慌てている頃だろう。




「却説、練習しようか」



『何の!?』




太宰は森の言葉を聞かず、私の手を引いて部屋を出た。


.

第三十八話「ふむ、残酷」→←第三十六話「不利なお願い」



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (148 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
381人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン
感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:らしろ | 作成日時:2020年7月20日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。